新型コロナウイルスの影響により、テレワークの導入が進んだことで、都市部で暮らし、通勤するという必要性が薄くなりました。そこで増えているのが郊外や地方への移住です。
電話がつながり、インターネット接続ができれば、どこででも仕事ができるのですから、今までの窮屈で慌ただしい暮らしから抜け出したいと思うのも、無理はないのかもしれません。
地方で暮らし、ときどき都市部へ出社。そんな拠点を2つにした暮らしをする人が増えているのです。
地方暮らしは生活費がかからないは本当か?
地方移住を考える人は生活や仕事の環境のほか、「生活費のかからなさ」を魅力に感じていることもあります。
都市部よりも物価が安いので、住む場所によっては都市部で30万円かかっていた生活が、生活レベルを変えずとも25万円でできるといった点も魅力なようです。
FP協会がまとめている総務省の家計調査(2019年)によると、関東に住む単身者の年間生活費は199万円ですが、北海道、東北に住む人は162.9万円。地方のほうが年間で36万円も生活費が安いという結果に。
月でみると都市部は16.6万円、地方では13.6万円と3万円の開きがありますから、地方のほうが安く暮らせているということが分かるでしょう。では、具体的に何にいくらがかかる暮らし方なのでしょうか。
【比較】都市部と地方の毎月の支出平均
総務省が毎年発表している「家計調査」によると、関東と北海道の支出の平均は以下のようになっていました。
持ち家の方も含まれているので、住居費は極端に少ない印象ですが、それ以外は参考になりそうです。

全体を見ると、北海道の方が関東よりも水道光熱費が高いことがわかります。寒さが厳しいのはもちろん、地方では配管などの費用がかかり、インフラの基本料金や使用料金が高めに設定されている場合があります。
また、交通・通信費は一括りのデータなのでわかりにくいですが、都市部は電車等公共の乗車料金が多く、地方では自動車の維持に必要な料金が多い傾向があると考えられます。
自動車を2台、3台と保有し、平均よりも大きな金額がかかっているご家庭も珍しくはないでしょう。
また、住居費はこのデータでは北海道のほうが高く出ていますが、両方に住んでいたものとしては都心部のほうが、家賃が高いことを実感しています。
地方、田舎であるほど安く、都内23区など、より都市部に入るほど高い。これは多くの方がご存知のことと思います。
テレワーク中心の地方移住、毎月かかる生活費の目安は?

では、コロナに働き方が変わった人が郊外や地方移住をする場合、どのくらいの収入があれば生活ができるでしょうか。
平均的なデータと異なるのは、自宅にいることが多いことによる水道光熱費の上昇と、月に数回の都市部への出社にかかる交通費の上乗せ(所属会社などからの補助や負担はないものと考えて)です。
テレワークにすると、平均で月に1700円、電気代が上がったというデータ(「スマ電®」調査より)があります。家にいるので水道代、ガス代も上がっているでしょう。
また、月数回の通勤にかかる交通費はいくら増えるでしょうか。
移住先や使える交通手段により異なりますが、例えば都市部から1〜2時間程度の郊外へ引っ越したとすると、片道2000円から3000円は少なくともかかるのではないかと思えます。
片道2000円としたら、4日出社でも1万6000円ほど交通費がかかります。(※テレワーク中の交通費支給はないものとして計算した場合)。交通費支給があったとしても、移住先によっては自己負担分が出てしまうことも。また自動車の保有も必要になるかもしれません。
こう考えると、平均の支出額よりも最低2万円は増えると考えられます。
移住先や暮らし方により支出は異なりますが、単身の場合は毎月の生活費は15.5万円、ご夫婦とお子さんというご家族なら27.5万円ほどあれば、移住し、テレワークで暮らしていけるのではないかと想定できます。
一方で、ご夫婦2人で20万円あれば暮らせるなどの報告をしているネット記事なども見かけます。私のところにくるお客さんでも、テレワークではありませんが自給自足の生活を目指し、夫婦2人の国民年金の約11万円ほどで暮らしが成り立っている人もいます。
要するに、どのような暮らし方をするかで、地方での生活費は大きく異なるのです。
この先、移住を考えている人は、移住先でどのような暮らしができるのか、生活環境を想定して、スーパーを廻ったり、近隣の様子を見たりして、生活費を一度試算されるとよいでしょう。
横山光昭(よこやま・みつあき)

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は累計330万部となる。