新種の巨大サイの化石を中国で発見、陸生哺乳類で最大級

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新種の巨大サイの化石を中国で発見、陸生哺乳類で最大級
新たに発見された古代の巨大サイ「パラケラテリウム・リンシャエンセ」のイメージ図

アフリカゾウなら4頭分。

大昔の巨大動物といえば恐竜が連想されることが多いんですが、進化の歴史の中では哺乳類にもかなり大きな動物が生まれてきました。というか、史上最大の動物は恐竜じゃなくて、哺乳類のひとつであるシロナガスクジラです。では陸上の哺乳類ではどうかというと、ステップマンモスもかなり大きかったし、メガテリウムも相当なものでしたが、一番大きかったのは絶滅した巨大サイたちです。

巨大サイにはいくつかの種があったとされていますが、そのひとつ「パラケラテリウム」は、サイといっても角はありません。今は絶滅していますが、その化石は中国やモンゴル、カザフスタン、パキスタンで見つかっています。巨大サイの進化の過程はやや曖昧な部分もあり、化石も完全な形でないものが多く、正確な体格はわかっていませんでした。でもはっきりしていたのは、「とにかくすごく大きかった」ことです。

中国科学院古脊椎動物古人類学研究所のTao Deng氏率いるチームが学術誌「Communications Biology」に発表した論文によると、この巨大サイのグループに新たな種が加わりました。2500万年ほど前に中国北西部に生息したとされる、「Paraceratherium linxiaense(パラケラテリウム・リンシャエンセ)」です。

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巨大な頚椎
Image: Tao Deng

パラケラテリウム・リンシャエンセの化石は、中国北西部の甘粛省の臨夏盆地で発見されました。2個体の化石が発掘されていて、1個体からは頭蓋骨や下顎骨、第一頚椎が、もうひとつの個体からは第二頸椎と胸椎ふたつが出てきています。発見場所は、2650万年前のものと推定される後期漸新世の地層です。

今回発掘された化石のうちひとつは「素晴らしい保存状態の頭蓋骨に顎と首の椎骨が付いており、非常によく保存されているので、非常に素早く埋められたことがわかります」と、論文共著者でハーバード大学の進化生物学者、Lawrence Flynn氏はメールで言っています。Flynn氏いわく、「解剖学的情報が、この化石は近縁の巨大サイとは別の新種のものであることを示しています」。

新種のパラケラテリウムの化石の分析は、2016年12月から2017年2月にかけて行われました。チームは化石サンプルをレーザースキャンしてデジタル3Dモデルを作り、そこからパラケラテリウム・リンシャエンセの特徴を読み取り、他の巨大サイと比較することができました。

それらの分析結果は、見つかった化石が従来知られているものとは違う、まったく新しい種であることを示していました。パラケラテリウム・リンシャエンセの化石は、他のパラケラテリウムと比べて頭蓋骨が細く、鼻が短く、首が長く、鼻腔が深くなっていました。Deng氏のメールによれば、パラケラテリウム・リンシャエンセには角がなく、「その第一犬歯が小さく、鼻切痕が深いということは、つかむ力のある鼻がより長かったことを示し、バクのそれに近い」そうです。そして1.14メートルある頭蓋骨から体の大きさが推定でき、それがパラケラテリウムの他の種との違いになっています。

Deng氏は部分的な化石から、パラケラテリウム・リンシャエンセの体重を24トンと推定していて、これは「現代のアフリカゾウの大きな個体4頭分」にあたるといいます。また肩高は5メートル、体長は8メートルと、2階建てバスをさらに1メートルほど高くしたようなイメージです。

Deng氏によれば、パラケラテリウム・リンシャエンセの足は意外と長く、走るのに適していて、頭は7メートルの高さにまで届いたので、「木のてっぺんの若葉を食むことができた」そうです。ゾウのように物を掴める鼻は「木の枝に巻きつけ、前歯で葉をそぎ取るのに非常に便利だった」とのこと。牙のような犬歯はおそらく小枝を噛み切ったり樹皮を剥いだり、高い木の枝を折り曲げたりするのに使われていたのだろう、とDeng氏は付け加えます。他のパラケラテリウムと同様、この新種のサイも開けた森林地帯に住んでいました。

興味深いことに、パラケラテリウム・リンシャエンセは、現在のパキスタンにあたる地域にかつて生息していた巨大サイと似ている点があります。この新たな研究は、巨大サイたちが中国北西部からチベットを縦断し、インド・パキスタン亜大陸に移動してきたことを示唆しています。これは進化という意味でも地質学という意味でも面白い意味があり、つまり漸新世には、チベット地域に「一部標高の低い(もしかしたら2,000メートルを下回る)地域があった」ことを示しているんです。また論文では、「この巨大サイの系統は(古代)テチス海の東岸沿いに、おそらくこの地域の低地を通じて、自由に広がっていったのかもしれない」とされています。

ちなみに現代のサイは、パラケラテリウムとか他の巨大サイの子孫ではありません。が、今のサイも昔のサイも、それよりさらに昔、今から5000万年前の種が共通の祖先となっています。