ジムでのトレーニングに関しては、しばしば相反するアドバイスに遭遇します。
これこれのエクササイズをやってはいけない、と助言してくる人もいるでしょう。ベンチプレスでバーベルを持ち上げたときに肘がぴんと伸びていなければならないなど、細かいことを言ってくる人も。
専門的なアドバイスがほしいだけなのに、まるで正反対の意見を聞かされるとイライラしますね。
でもよく注意してみると、大きくかけ離れたアドバイスの裏には、それぞれに理由があることが多いのです。
筋トレの一貫したアドバイス
アドバイスが一貫しない理由に移る前に、ひとつお教えしておきましょう。
フィットネスの世界にはいくつかの真理が存在します。これらは本当に信頼できるものですので、もし判断に迷ったときには、以下の基本に立ち返りましょう。
- 筋トレは重要。効果を得るにはそれなりに負荷の高いものを。
- 有酸素運動も重要。最低でも週150分は取り組むべきです。
- タンパク質を十分に摂取する。これは、あらゆる体組成の目標(筋肉を増やす、脂肪を減らす、体重を維持しながら健康を増進するなど)に効果的です。
- やみくもにエクササイズをするのは怪我のもと。
- 継続はつねに完璧さに勝る。
では、混乱を招くアドバイスが多い理由をいくつか紹介していきましょう。
フィットネス文化が異なれば、やり方も異なる
あなたがやっているのは、ボディビルディング、パワーリフティング、それともウエイトリフティングでしょうか?
あるいはクロスフィット、ランニング、サイクリング、またはケトルベル・トレーニング?
この質問にはっきりと答えられないなら、それがまさしく混乱の元です。
なぜなら、フィットネスの種類が違えば、やり方も少しずつ違っていて、そこには異なる目標、異なる背景があるからです。
たとえば、ウエイトリフターは多くの場合、スクワットをするときに行けるところまで深くしゃがみます。競技ではそのような姿勢をとらざるをえないからです。
他方、パワーリフターはたいてい、太腿が床とせいぜい平行になるところまでしか腰を落としません。競技ではその点が評価対象になるからですし、またエネルギーをできるだけ効率よく使うことも重要になります。
この手の食い違いは、ほとんどの相反するアドバイスにみられます。
また、特定のトレーニングスタイルがほかより優れているという考えの裏にも必ずあるものです。たとえば、軍の体力テストでは「厳密な」プルアップ(懸垂)が求められます。
それに対し、クロスフィットの競技では「素早い」プルアップがよしとされますが、それには厳密でないキッピング・プルアップやバタフライ・プルアップがいちばん理にかなっています。
それぞれが自分たちにとって最適なやり方を取り入れているわけです。
ですから、ただ「プルアップ」や「スクワット」をやりたいだけという場合、正しいやり方がわからず混乱するのは無理もありません。正しい答えがいく通りもあるのですから。対処法としては、いずれかの競技を選び、それを優先的に参考にするのも手です。
もうひとつの対処法は、いわば禅の精神で、どのような答えもそれは「ひとつの答え」にすぎず、「絶対的な答え」とする必要はないと考えることです。
厳密には正しくても、有益とは限らない
フィットネスの基本がシンプルであることは、すでにお話した通りです。
それでも、人はフィットネスについてあれこれ話したがりますし、「続けることがいちばんだ」とか「さあ、張り切って重いのを持ち上げよう」といった当たり前のこと以外にも、何かを言わなければと考えます。
だからこそ、ものすごく細かいところにやたらと目を向けるのです。
いくつかの研究で、有酸素運動を多く行う人は筋力の向上がわずかに低いという結果が出ているからと、有酸素運動を「いっさい」やらないというリフターもなかにはいます(ちなみに、その研究結果に対する反応としては適切ではありません。
「有酸素運動は筋力アップに逆効果」という説は、事実というより迷信です)。
こうした姿勢から人々は、ごく基本的な栄養管理を試してもみずに、どのサプリメントがいちばんいいかとこだわったり、ジムで実際にアームカールをするわけでもないのに、どのカールのバリエーションがより効果的か調べたりするようになるのです。
結論を言えば、「あることが真実か否か」や「XはYより効果的か」といった終わりのない議論に遭遇することはありえますし、実際に遭遇するでしょう。
けれども本当のところ、そんなことは大きな問題ではありません。
疑問を感じることがあれば、上に挙げた基本を思い出してください。
人は自分が信じたいことを広める
トレーニングを巡る混乱には、明らかな虚偽情報から生まれたものもあります。たとえば、TikTokではインフルエンサーが古くからの迷信を繰り返しています。
体の一部分だけ脂肪を落とすことなどできませんし(たとえば、腹筋をしてもお腹のぜい肉は減らせないのです)、また可能だったことなどありませんが、驚くほど多くの人が、部分的に脂肪を落とすのは可能だと平気で口にしたり、ほのめかしたりしています。
オーディエンスがそういった類いの話を求めているからです。ときには、言っている本人さえそう信じ込もうとしています。