8月上旬、探査車パーサヴィアランスは火星の岩石の初となるサンプル採取を試みました。しかし、肝心のサンプルチューブが空っぽだったため、パーサヴィアランスのチームは消えた岩石の謎を解こうと遠隔で調査を行うことに。
パーサヴィアランスチームの一員でカリフォルニア工科大学のプロジェクトサイエンティストKenneth Farley氏は、先週公開したブログ投稿で採取しようとした岩石とミッションの次のステップについて説明しています。問題になった岩石は「Roubion」と呼ばれており、掘削の際に塵や砂へと細かく砕け散ってしまったのこと。RoubionはジェゼロクレーターのCrater Floor-Fractured Rough(CFFR)という領域にある平たい多角形の岩で、NASAの科学者たちはこの枯渇した湖底に関する最も古い情報を持っているだろうと考えていました。生命の痕跡の証拠とまではいかなくても、岩石サンプルには少なくとも赤い惑星の古代の気候と地質学史の情報が含まれるだろうと思われていたのです。
しかし、サンプル採取のターゲットには不向きだったため、チームは「Roubionが反応の悪い岩石だっただけというアイデアを試せるような…(中略)…できるだけ異なる岩石」へと方向転換した、とFarley氏は書いていました。次にサンプル採取を考えているのはクレーター内の「Citadelle」という地点で、露頭やボルダーがある400メートルほどの岩だらけの稜線です。CFFRの堆積層と比べて、Citadelleでのボルダーの掘削はだいぶ異なるものとなりそうです。

Image: NASA / JPL-Caltech / University of Arizona
Farley氏曰く、チームはCitadelleでサンプル採取ターゲットを選んで今週にも掘削し、8月の終わりごろにサンプル採取を目指す可能性が高いとのこと。もしうまくいけば、火星の地表から採取されたサンプルの第一号はCitadelleの岩石となります。NASAはやがて別のミッションでサンプルを回収し、2030年代初頭に地球に運ぶ予定。そのミッションは近年の宇宙探査史上、そして間違いなく火星探査の歴史上で最も野心的なミッションのひとつとなるでしょう。もし地球への輸送が成功すれば、そのサンプルは宇宙の最も遠くから人類が収集した物体となります。
Citadelleの後はというと、パーサヴィアランスはすでに何カ所か行き先が決まっています。クレーター内の砂丘に覆われた一帯「Séítah」を調べる予定ですし、ゆくゆくは宇宙生物学の観点から最も期待できると研究者らが考えている地域、デルタにたどり着く必要もあります(地上で原始の微生物が生じた場所の、火星における類似物が干上がった河川デルタということに基づいて見込んでいます)
しかし、パーサヴィアランスはデルタに到着する前に、CFFRに戻って再び掘削を試みるかもしれないとFarley氏は述べていました。探査車の運が悪かっただけという可能性があって、同じエリアでも地表から突き出ている岩石の方が構造的に堅固なので、より良いサンプルターゲットになるかもしれないとのこと。
初のサンプル採取こそ失敗に終わってしまいましたが、早々に次のステップが示されましたね。地上から成功を祈ります。
Source: NASA