「一人勝ち」終わった東京 どん底の都市が生み出すのは
江戸の時代から膨張を続けてきた東京。戦後は横に広がり、最近はタワーマンションなど縦の広がりも著しい。五輪・パラリンピックが開かれている2021年、この都市を見つめ直す。
「上からの街づくり」はほとんど失敗、「よそ者」の新しい文化に希望 都築響一さん(編集者・写真家)
いま、東京の相対的価値はすごく落ちていますよね。1990年代までは、人と違うことをしたければ、東京に出てくる必要がありました。地方の高校生が音楽で生きていきたいと思えば、東京に出てバイトしながら、ひたすらデモテープをつくって、認められるのを待つしかなかった。でも、いまは地方の実家から、いきなり自分の曲を世界へ配信できます。音楽に限らず、テクノロジーの発達が、東京の「一人勝ち」を終わらせてしまったんです。
1956年東京生まれ。現代美術、建築など多方面で執筆。著書に「TOKYO STYLE」「東京右半分」。
いま、地方では小さな本屋さんが増えています。空き店舗を安く借りて、好きな本だけを置く。店の一角をカフェやギャラリーにしたり、著者を呼んでトークショーをしたりする。渋谷や下北沢でそういう本屋を開こうとしても、お金がかかりすぎてできません。インテリアでも、センスのいい古い家具をそろえている店はほとんど地方にある。広いスペースが必要なので、東京ではやれないんです。
いまの東京は、住みやすくなる要素がほとんど見当たらないですね。不動産や家賃は高騰しているのに、給料は上がらない。ディベロッパー主導の「上からの街づくり」はほとんど失敗しています。典型が渋谷です。街のキャラクターが失われてしまった。
世界的な都市間競争の中で重要なことは。広がる地域間格差の懸念とは。記事の後半では、都市計画学者の村木美貴さんと社会学者の橋本健二さんにも東京が抱える問題と展望について語ってもらいました。
東京に可能性が全くないとい…