ジグソーパズルと言えば、高齢者や小さな子ども、あるいは、救いがたいほどのマニアがするものだと思われています。

新型コロナウイルス感染症が拡大するなかで、私は、健全な範囲内でジグソーパズルにはまりました。しかも、それにはもっともな理由があるのです。

ジグソーパズルをすることで、数えきれないほどの健康的メリットが得られるのです。なかには、意外と思える効果も含まれています。

1. 記憶力が向上する

ジグソーパズルをするときは、論理力や分析力を司る左脳と、想像力や直観力を司る右脳が一致団結する必要があります。ピースを1つ手に取り、パズル全体のどこにピタリとはまるのかを予想する行為は、知力を鍛えるジムに行くようなもの。

右脳と左脳を神経回路で結合させ、思考プロセスのスピードを上げることが求められるので、短期記憶が向上するのです(高齢者の認知力低下を防ぐためにジグソーパズルがよく活用されているのはそのためです)。

神経学の学術誌「Archives of Neurology」で2012年に発表された研究によると、ゲームやパズルなど認知力を大いに必要とする活動に取り組んで脳を活性化している高齢者は、脳内に蓄積しているアミロイドベータタンパク質が少なかったそうです(アミロイドベータタンパク質は、アルツハイマー病の兆候である、神経細胞に蓄積したプラークの主成分です)。

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2. 問題解決力と、細部への注意力が向上する

ジグソーパズルを完成させるときは、試行錯誤を繰り返します。ピースをまずは色別に、次に形状別に分類して組み立てるのもいいでしょう。

それと同時に、頭の中で形を思い浮かべたり、ちょっとした推測をあれこれ立てたりすることをひたすら続けます。そのあいだ中ずっと、脳内では細胞の結合が強化されています。これが、批判的思考力の向上につながるのです。

ときには、同じ形状のピース50個くらいを1時間くらいじっと眺める以外、パズルを先に進める方法がないこともあります。形や色合いのわずかな差異を見きわめたり、ぽっかりと空いた顔の片隅に当てはまる1ピースを探し出したりするわけです。

そうやってピースを徹底的に吟味するときは、細部まで目を配るために注意力を高める必要があります。それが、今度30ページ分の法的文書がメールで届き、内容を確認するときに役立つかもしれません。

ジグソーパズルはまた、視空間を推理する力を向上させます。

パズル全体のどこにピースがはまるのかを頭の中で予測することで、視空間の認知を司る脳の部位が鍛えられるのです。この能力は、荷物を詰めたり、地図を読んだり、運転したり、踊りの振り付けを覚えたりするときに使われます。

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3. ストレスレベルを下げ、気分を改善する

ジグソーパズルをしているときには、脳が夢を見ているときに近い状態になることを知っていましたか。健康情報サイト「Sanesco Health」は次のように説明しています:

右脳と左脳を同時に働かせることで、脳波は、通常の覚醒時の「ベータ波」から、夢を見ているときと同じ心的状態の「アルファ波」へと切り替わります。

アルファ波が出ている状態では、潜在意識が発揮されます。

そうした、創造力に溢れて集中した瞑想的状態を自然に誘発し、より深いレベルでの結合を引き起こすのがジグソーパズルなのです。

ジグソーパズルをしているときや、完成させたときに抱く高揚感は、脳内だけに存在しているのではありません。そうした高揚感はたしかに、脳で感じるものではありますが、その喜びや満足感は科学的に裏付けられています。

パズルをしているときは、一時的に(ちょっとだけ)歯がゆさを感じることがあるかもしれません。

しかし、ジグソーパズルに取り組むという行為そのものに、気分を高揚させる効果があります。正しいところにピースがピタリとはまるたびに、脳内ではドーパミンが分泌されます。

ドーパミンという神経伝達物質が脳内に流れると、幸福を感じたり、頭が冴えわたったりします。Sanesco Healthではさらにこう説明されています。

ドーパミンが分泌されると、運動能力や集中力が増し、より前向きな気分になり、自信や記憶力が向上します。

さほどお金がかからず、気分を高揚させ、記憶力の強化とストレスの解消に効果的で、幸福感や達成感を与えてくれるうえに、家から一歩も出ずにできるのが、ジグソーパズルなのです。

まだ始めていないなんて、もったいないとしか言いようがありません。

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4. 子どもの認知機能向上にも効果的

ジグソーパズルは、子どもの心の発達にもさまざまなかたちで役立ちます。

空間認識力や、整理整頓のスキル、我慢強さや自制心を向上させるうえで効果があるのです。

記憶力や手先の器用さも身に着きます(ボタンをはめたり、靴ひもを結んだり、ファスナーを上げ下げしたりできるようになるなんて、最高ですよね)。


Source: Archives of Neurology, NHK, Sanesco Health