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Apple時価総額、一時初の3兆ドル 東証1部の半分に迫る

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【シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=宮本岳則】3日の米国株式市場で米アップルの時価総額が一時、3兆ドル(約340兆円)を突破した。大台超えは世界の上場企業で初となる。1社で東証1部全体の時価総額の半分に迫る勢いだ。電気自動車(EV)分野への参入観測で成長期待が高まったほか、強い財務基盤が幅広い投資家をひき付ける。マーケット全体をみると一部の大型ハイテク銘柄にマネーが集中しており、相場の波乱要因になりかねない。

アップル株の上昇率は一時、前週末比2%を超え、上場来高値を更新した。アップルの時価総額は2018年8月に米企業として初めて1兆ドルを突破し、約2年後の20年8月に2兆ドルの大台を超えた。3兆ドルには2兆ドル達成から約1年4カ月で到達しており、増加ペースに弾みがついている。21年12月30日時点の東証1部の時価総額合計は約734兆円。アップルは1社でその半分に迫る。

アップル株は21年、20年末比で34%上昇した。史上最高値圏にあるダウ工業株30種平均(19%)やS&P500種株価指数(27%)を上回る。アップルが幅広い投資家からマネーをひき付けられるのは、成長性と財務の安定性という2つの観点で評価されていることが大きい。

アップルの成長力を重視する投資家は、世界で10億台以上稼働する「iPhone」の動向に注目する。利益率の高い高機能端末への買い替えを促しつつ、音楽配信など端末利用者向けサービスで稼ぐ事業モデルが評価されてきた。ここに新たな成長ストーリーが加えられようとしている。水面下で開発中と噂される拡張現実(AR)や仮想現実(VR)端末、自動運転EVだ。

米モルガン・スタンレーは21年12月、アップルの目標株価を164ドルから200ドルに引き上げた。担当アナリストのケイティー・ヒューバティー氏は顧客向けのメモで、「(ARやVR、自動運転EVが)現実のものとなる日が近づくにつれ、株価の評価に反映させる必要がある」と指摘した。

安定性を重視する投資家にもアップルは魅力的に映る。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同月、アップルの格付けをトリプルA格に相当する「Aaa」に引き上げた。米ブルームバーグ通信によると、S&P500構成銘柄で最高位の格付けを付与されているのはマイクロソフトとジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、アップルの3社のみだ。

強固な財務基盤が安定的な株主還元を可能にする。アップルは21年9月末時点で現金や市場で売却可能な債券を約1900億ドル保有していた。有利子負債を差し引いた「ネットキャッシュ」を時間をかけてゼロにする方針を公表しており、余剰資金を配当と自社株買いに振り向ける。株価の下支え効果は大きい。

「高品質でボラティリティー(変動率)の低い銘柄が『キング(王様)』のように取引されている」。米バンク・オブ・アメリカのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏はこう指摘した。米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小を開始し、市場は22年中に利上げがあると予想する。カネ余り相場が転機を迎えるなか、アップル株はマネーの「安全な逃避先」に選ばれている。

米株式市場では成長と安定性を求めて特定銘柄に資金が集まっている。アップルとマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、テスラ、メタのハイテク6社の時価総額合計は、S&P500構成銘柄全体の25%を超えている。指数連動の「パッシブ運用」が広がり、組み入れ比率の大きい時価総額上位は機械的に買われやすくなっている面もある。バンカメによれば21年に米株ファンドには3990億ドルもの資金が流れ込んだ。

金融派生商品「オプション」市場でもマネーの偏りが見られる。米サスケハナ・インターナショナル・グループによるとアップルのコールオプション(買う権利)取引量は21年12月下旬、1日あたり180万枚(20日平均)に達し、米個別株オプションで最も多かった。2位のテスラの2倍、3位のエヌビディアの3倍だ。個人やファンド勢が株高継続を前提に投機的な取引を膨らませている。

「アップルやマイクロソフトが何らかの理由で急落した場合、マーケット全体に悪影響を及ぼす」。米ミラー・タバックのストラテジスト、マシュー・マリー氏はこう警鐘を鳴らす。幅広い投資家が両銘柄を保有しているため、マネーの逆回転が始まると売りが売りを呼ぶ展開になりやすい。

サスケハナのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・マーフィー氏はコールオプション取引について「アップルへの高い集中度は持続しない」と指摘する。投機マネーはアップル株の上昇トレンドに追随しているだけで、下落に転じればアップルから離れるとみる。株安を増幅させる一因となる。

「アップル・ショック」は繰り返し起きている。19年1月3日、アップル株が売上高見通しの下方修正で前日比10%安まで売られると、ダウ平均の下げ幅は終値で660ドルとなった。リスク回避モードが広がり、円が一時1ドル=104円台と18年末の東京市場(110円台)から約6円高くなった。

アップルは1月下旬に21年10~12月期決算の発表を控える。市場予想によると売上高の伸び率は5四半期ぶりに1ケタ台にとどまりそうだ。世界的な半導体不足が影を落とす。予想PER(株価収益率)は30倍台で、過去10年平均(15倍)を上回り、割高な水準にある。株式市場の期待にどう応えるのか。ティム・クック最高経営責任者(CEO)のかじ取りは、相場全体の行方も左右する。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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