考えなくても、自動的に答えられる質問というのがあります。たとえば、お店に入って「何かお探しですか?」と挨拶代わりに聞かれるような質問です。
型どおりの挨拶だとわかっているので、反射的に「見てるだけです、ありがとう」と答えられます。同じことが「元気?」にも言えます。
外に出かけて、目が合った人に「元気?」と聞かれ、「元気です。あなたは?」と、幾度となく返していると思います。誰も、本当に元気かどうかを聞いているわけではありませんし、相手がどう答えるかをきちんと聞いているわけでもありません。
今のような、あらゆることが間違いなくうまくいっていない時でもそうです。
社員や同僚、お客さんなどと電話やチャットをする時に、最初に「元気?」とか「調子はどうですか?」と聞くと、相手は基本的に「元気」というような答えを返します。
いきなり不調や不満を訴える習慣はありませんし、相手の状況がよくないことはわかっています。率直な答え、具体的な答え、思いやりのある答えなどは返ってきません。
これでは孤立する問題が悪化するだけです。
人との関係性は「複数のつながり」が大切
研究によると、人は「複数の結びつき」を好むと証明されています。1つのつながりだけでなく、いくつものつながりのある関係です。
たとえば、あなたと私はどちらも子どもがいて、運動をするのが好きで、リー・チャイルドの推理小説『ジャック・リーチャー』シリーズのファンというような感じです。
表面的ではありますが、複数のつながりがあると、ただの知り合い以上に互いのことを気にかける可能性が高くなります。
また、「子どもが深刻な怪我から回復した」「経済的な危機を乗り越えた」「自力で成功をつかんだ」など、複数のつながりがより意味のあるものであれば、そのつながりによってより良く、長続きする関係を築く可能性がさらに高くなります。
お決まりの挨拶から一歩踏み出す10の質問
しかし、「元気?」というようなお決まりの質問をしているだけでは、そのようなつながりを見つけるのは簡単ではありません。
一般的な答えを求めるような質問をしていたら、「話を聞いてくれている」「気にかけてもらっている」「大事に思ってくれている」と相手が感じることはほぼありません。
このような状況を変えるには、「(こんな大変な状況だけど)元気にしてる?」と誠実に伝えられる聞き方に変えましょう。
今度、そのような相手と電話やチャット話をする時は、以下の質問のどれかを試してみてください。
- 家で仕事をしてみて、どんなことが予想していたよりも楽でしたか?
- あなたの仕事で、家で仕事をする時に一番大変だったことは何ですか?
- 「いつもの生活」に戻った時に、変えようと決めていることは何ですか?
- (この生活になって)不自由を感じていないことはありますか?
- どんな習慣が新しく身につきましたか?
- どんな習慣を改善したいですか?
- 家に籠もる/人と距離をとる/家で働くなど、このような生活がはじまる前に知っておきたかったことは何ですか?
- 気分が落ち込むような時は何をしていますか?
- 仕事のやり方が変わったなかで、一番不自由なのはどんなことですか?
- 今一番やりたいことは何ですか?
くれぐれも、その質問に対する自分の答えを言いたくなる気持ちはグッとこらえてください。相手がどういう状況か、どう思っているのかを気にかけ、相手の答えに対しする質問を1つか2つ続けましょう。
また、質問は手短に。「なぜ」「いつ」「誰が」「何を」「どのように」を聞きます。人は、続きを促されるのが好きなものです。
自分の経験を話して遮るのではなく、質問をして「その話/あなたに興味がある」ことを示しましょう。そうすることで、あなたが話を聞いているだけでなく、相手のことを気にかけていることが伝わります。
これがいい人間関係を築くうえでの土台となります。
ーー2020年5月21日の記事を編集のうえ、再掲しています。
Source: Penn Libraries, Harvard Business Review
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