ヒトの心臓細胞でパタパタ動く「サイボーグフィッシュ」で目指すのは、人工の心臓

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • Rina Fukazu
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ヒトの心臓細胞でパタパタ動く「サイボーグフィッシュ」で目指すのは、人工の心臓
Illustration: Michael Rosnach, Keel Yong Lee, Sung-Jin Park, Kevin Kit Parker

見た目とのギャップがすごい。

サイボーグというと『スタートレック』や『ロボコップ』に登場するようなもっと派手で強そうなヤツを期待していた人もいるかもしれません。でも新たに開発されたサイボーグフィッシュは、正直、ちょっとなんだかイメージと違う......なーんて、侮ることなかれ。ハーバードとエモリー大学の科学者らによって開発されたこのフィッシュ、見た目こそシンプルながら、業界において重要なミッションを背負っているようです。

100日以上泳ぎ続ける

人間と同じようなジェスチャーができるロボットと同様、このサイボーグフィッシュは魚のような動きで水中を泳ぐことができるとか。しかも、知能によるガイドなしで。どうやら見た目以上にパワフルで、100日以上は泳げるのだそうです。

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釣り針にかかったサイボーグフィッシュ
Photo: Michael Rosnach, Keel Yong Lee, Sung-Jin Park, Kevin Kit Parker

人間の心筋細胞からできています

さて、一見シンプルなデザインにも秘密があります。まず、尾ひれの部分が人間の心臓細胞(幹細胞から得られた心筋細胞)のレイヤーで両側を覆われた状態になっていて、片側の細胞が収縮すると、その方向に尾が引っ張られるという仕組み。片側が収縮するあいだ、もう片方は伸びた状態になり、交互に収縮を引き起こすことができるため、継続的に泳げる状態になっているといいます。

さらに、ペースメーカーのようなメカニズムが働くことで、こうした動きのリズムや頻度を自動的に標準化。これにより水中できちんと尾をパタパタと動かし泳ぎ続けることが可能に。

もっと面白いのが、人間の体が運動により筋肉を発達させるのと同様に、サイボーグフィッシュも次第に泳ぎを上達させたということ!しまいにはゼブラフィッシュと同程度のスピードで水中を泳ぐことができるようになったとか。

Video: Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences/YouTube

目指すは「人工の心臓」

そんなサイボーグフィッシュですが、いつかどこかの水族館で出会えるのかと思いきや、もっと壮大なポテンシャルが期待できるようです。

研究者らは、このメカニズムを土台に人工の心臓を開発することを目指しているといいます。サイボーグフィッシュで心臓の機能や、自律的に継続して動く仕組みを再現することに成功したことは、人間の体の働きにあるのと同じような臓器から人工の心臓を作る研究を進めるうえでかなり大きな一歩となったようです。