労災死亡者に占める60歳以上の高齢者の比率が4割を超えた。けがも含めた高齢者の「労災死傷」も昨年は3万7813人と過去最多を記録し、比率は25%になった。年金の支給年齢引き上げや企業への雇用延長の義務付けなど、「人生100年時代」のスローガンの下、高齢者の労働継続を促してきた政府だが、肝心の安全対策は後手に回っている。(編集委員・池尾伸一)
「仕事が厳しいなんて言ってられない。稼がないと生きていけない」
埼玉県内で妻と2人で暮らす78歳の男性は言う。受け取る年金は月8万円。月4万円の家賃も払わねばならず、派遣の警備員として病院で働く。
午前8時から「24時間勤務」の日もあり、夜通しで働くことが多い。月収は14万円。きつい仕事だが、男性は「この年になると仕事は少ない。続けるほかない」と言う。
年金支給開始年齢の引き上げに加え、物価上昇で高齢者の暮らしは苦しくなる一方。だが若い世代に比べて就職の門戸は狭い。
「高齢者ほど厳しい環境で働いているようになった」。労働局の労働基準監督官出身の社会保険労務士、原諭 さんは実感している。
現場を回ると安全管理態勢の不備を感じることも多い。「高齢者がヘルメットをかぶらず屋根に上っていたり、重機のそばで作業していたり…。会社が安全教育をしていないケースが散見される」
身体能力の落ちた高齢労働者の安全を確保するには、階段への手すり設置...
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