糖質制限食は本当に健康によいのか。内科医の名取宏さんは「極端な糖質制限はおすすめできない。糖質は多すぎても少なすぎても身体によくないというデータもある」という――。
にぎりずし盛り合わせ
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食事法の「デメリット」は個人差が大きい

ちまたには、健康によいとされる食事の情報があふれています。でも、その情報の質はさまざまで玉石混交です。だいたい食事が健康に与える影響は小さく、治療薬の研究に比べて、短期間の研究では明確な結論が出にくいという特徴があります。だから「健康にいい食事法」に関しては、言ったもの勝ちという面があります。常識から外れた食事法のほうが注目を集めやすいことも忘れてはいけません。よく目や耳にする食事法は、十分なエビデンスに支えられているからではなく、目新しいから話題になっているにすぎないかもしれません。

そして、食事が健康に与える効果は小さいからこそ、どんなに健康によい食事法でも持続できなければ、効果が期待できません。ところが食事は好みの個人差が大きく、ある人には無理なくできる食事法でも、別の人には継続困難な食事法だったりします。好きなものが食べられないこと、継続困難な食事法を続けることは、生活の質を落とします。食事法のデメリットはしばしば軽視されていますが、医療全般において医療介入を行うかどうかをメリットとデメリットのバランスで決めるように、我慢に見合うだけの健康が得られるかどうかも考えなければなりません。