物価高と賃金の伸び悩みへの対応は、参院選の大きな焦点になる。30年近く上がらない賃金では、現在の物価急騰をカバーできないからだ。アベノミクスの柱といわれた金融緩和は円安を助長し、さらに物価を押し上げる副作用も指摘されている。与野党には生活の防衛策の提示だけでなく、現在の政策が国民に及ぼす影響への検証も求められている。(渥美龍太)
◆米国、英国、韓国では賃金上昇
「日本だけが異常だ」。
東大の吉川洋名誉教授は2013年1月、日本経済がデフレに陥った原因を「賃金の下落」と主張する著書を出版し注目された。吉川氏は今月、取材に対し「当時も今も、先進国で日本だけ賃金が上がらない異常な状況は変わっていない」と強調した。
経済協力開発機構(OECD)によると、名目賃金は1995〜2020年にかけて米国や英国で2倍超、韓国は3倍近く上がり、物価の上昇率を超えた。一方、日本は賃金が下落し物価の上昇率に届かない。
ただ12年末の衆院選では、当時野党だった自民党の安倍晋三氏はデフレの原因を「(金利を低く抑えてお金の量を増やす)金融緩和の不足だ」と主張して論戦に挑んだ。日銀OBは「緩和さえやれば日本は変わるという、すさまじい空気だった」と振り返る。
◆「値上げ許容できないのは当然」
政権を奪還した安倍氏は、日銀総裁に黒田東彦 氏を任命し主張通り緩和を始めた。だが、9年以上をかけても経済の好循環は実現していない。黒田総裁は今月「家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言して批判を受けた。国民が値上げに耐えられない背景には吉川氏らが言う「上がらない賃金」の問題がある。
大和証券の末広徹氏は、上昇を続ける社会保険料や住宅価格など、総務省の消費者物価指数の...
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