ニュージーランドでは温暖化でペンギンの子どもがバタバタ死んでいる…

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  • author Lauren Leffer - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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ニュージーランドでは温暖化でペンギンの子どもがバタバタ死んでいる…
Image: Andrea Geiss / Shutterstock

つらい。人間みたいに注意報や警報を伝えられればいいのに…。

ニュージーランド北島の最先端に位置するNinety Mile Beach(実際は55マイル=88.5kmしかない)は、いつも釣りや観光、レジャーを楽しむ人たちで賑わっています。そんな明るいイメージのビーチは、ここ数週間、悲劇の舞台になっています。

続々と打ち上げられる世界最小のペンギンたち

Radio New Zealand(RNZ)の報道によると、ハイキングや海水浴で訪れた人々が、西岸に打ち上げられている数百羽に及ぶコガタペンギン(マオリ語で「kororā」)の死骸を発見したそうです。地元の自然保護当局によると、この現象は海水温の上昇によって引き起こされている深刻な鳥類の大量死を示唆するものだとのこと。

5月末にテ・アラロア(トレイル)を歩いているときに打ち上げられたペンギンに気づいた男性は、その後わずか3日間で200羽以上の死骸を見つけたそうです。RNZは、この男性の報告を次のように引用しています。

「かなり多くの数がいるのが異様に感じたので、どれくらいいるのか数えてみようと思いました」

彼は3日にわたってペンギンを数えました。

「初日は10kmの範囲で75羽、北へ向かって歩いた2日目にの朝には71羽、3日目には約59羽のペンギンが死んでいました」

Turnerさんは、30キロの範囲で、毎日200羽以上のペンギンが打ち上げられていたのではないかと推測しています。

「砂丘の裾にも上にもいました。満潮時の潮位よりかなり上で見つけたペンギンは、たぶん潮が引いてからしばらくそこにいたんだと思います。捕食されたように見える個体もありました。でも、私が見つけたペンギンのほとんどは、満潮時よりも低い場所で死んでいました。打ち上げられて間もなかったのだと思います」

RNZはまた、別の人が同ビーチで183羽の死骸を見つけたと報じています。ペンギン以外にも、ミズミナギドリやウミツバメなど他の海鳥の死骸が確認されているとのことです。さらに、この現象は同ビーチだけでなく、ニュージーランド北部に位置する他のビーチにも広がっているといいます。島の東側にあるトケラウビーチでは、地元住民が5月に1週間で40羽のコガタペンギンが打ち上げられているのを目撃したと話しています。

犠牲になったペンギンの多くはまだ赤ちゃん

ニュージーランド自然保護局が解剖したところ、特に傷つきやすい幼鳥が多くを占めていたそうです。死因は飢えと低体温症。水中で体温を維持するために必要な体脂肪がなかったのだそうです。

環境保全省のGraeme Taylor氏がRNZに語ったところによると、皮肉なことに気候変動とラニーニャによる海水温の上昇が原因で低体温症になってしまったみたいです。

Taylor氏によると、コガタペンギンは海水温の低い場所でエサを見つけるのを好むらしいのですが、今夏のようにラニーニャで常に亜熱帯からの北東風が吹いていると、海水温が平年よりも高くなってエサが不足するため、体脂肪を蓄えられなくなるそうです。

コガタペンギンは、体長が平均で25.4cm、体重わずか900gと、世界最小のペンギン種として知られています。以前は豊富な個体数を誇っていましたが、ここ数十年その数は減少傾向にあるのだとか。

気候変動とそれによって増強したラニーニャが原因か

ラニーニャとエルニーニョは自然現象ですが、人為的な気候変動によって極端化し、より発生しやすく、より強くなっている可能性があります。気候変動によって暖められた海洋がラニーニャを激甚化させ、それに伴って南太平洋地域が受ける影響もより大きくなっていると考えられます。

現在起こっているコガタペンギンの大量死は、これまでも10年に一度くらいのペースで起こっていましたが、ニュージーランドの海は暖かい年が多くなりつつあるとRNZは報じています。

また、Taylor氏はこう話します。

過去には、多くの鳥が死ぬような悪い年の後に、個体数が回復する良い年が続いたかもしれませんが、良い年よりも悪い年の方が多くなるようだと、回復できなくなるでしょうね。

世界最小のペンギンから最大のペンギンまで、気候変動は影響を与えまくっています。2019年には、陸地の気温が高くなったせいで、数百羽のマゼランペンギンがアルゼンチンの繁殖コロニーで死にました。また、最近の研究は、このまま南極の海氷が解け続けるようだと、体長が約1mある最大種のコウテイペンギンはわずか数十年で絶滅するおそれがあると警告しています。

ペンギンが海を飛び回って、大地でよちよち歩きを続るための最善策は、化石燃料の消費量を大幅に削減して、気候変動をスローダウンさせることです。