NASA、アルテミス3の月面着陸の候補地13地点を発表

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NASA、アルテミス3の月面着陸の候補地13地点を発表
Photo: NASA|アルテミス1の打ち上げを前にケネディ宇宙センターの発射台に鎮座するSLSロケット

打ち上げが迫るアルテミス1以降のミッションも着々と準備中。

NASAは人類を再び月へと送る準備を進めていますが、そのためにはまず着陸地点を決める必要があります。先週金曜、男女の宇宙飛行士が月面に降り立つことを目指すアルテミス3ミッションの着陸候補地として、NASAは月の南極付近の13地点を発表しました。

各候補地の範囲はおよそ10マイル(約1km)四方で、それぞれ半径328フィート(約100m)ほどの着陸地点が複数含まれています。金曜に行なわれた会見の中で、NASAの主任探査科学者Jacob Bleacher氏は、「候補地の範囲は複数の駐車場、着陸地点はランダーのための1台分の駐車スペースだと考えられますね」と述べていました。

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アルテミス3の着陸候補地として挙がっている、月の南極付近の13カ所のレンダリング画像
Illustration: NASA


月の南極には水が存在する可能性がある

NASAは候補地を選定するにあたり、2009年に打ち上げられ現在も月を周回中の衛星ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)が収集したデータを活用しました。月極域をマッピングしてきているLROは、NASAが将来の月面ミッションの着陸地点を見つけ出す際に役立ったのです。

アルテミス3が目指す月の南極は、永久影に水氷が存在しているかもしれないことから高い関心を集めています。月に存在する水は、月面での持続可能な拠点を支える貴重な現地資源を宇宙飛行士たちにもたらすため、今後の宇宙探査において大きな強みだと考えられています。

南極地方には恒久的に影となっている場所と絶えず太陽光を浴びている場所が存在していて、この太陽光と暗闇の比率はたった数マイルほどのわずかな距離で変動します。「太陽光が平均よりも多い位置を探せば、エネルギーと温度制御に太陽光を活用するシステムを設計できるようになる」とBleacher氏は言っていました。「同じように、極域特有の永久影は、そこに閉じ込められている水や他の揮発物を入手できる機会をもたらす」とのこと。ですから南極にはいくらかのメリットがあるものの、NASAは着陸地点を決める際にはたくさんの技術的な問題も考慮しなくてはなりません。

着陸候補地の審議は2年に及んだ

アルテミス月科学のリーダーSarah Noble氏は、「アポロの着陸地点は表側のどちらかといえば中心部でしたが、今回目指すのは全く違うところ、古代の地質学的な地形において異なるところです」と、会見の中で述べていました。NASAが全局的に編成した科学者とエンジニアたちのチームが、数十年分のデータに目を通し、確実に安全着陸できるか、通信しやすいか、そしてきちんと太陽光が当たるという条件に基づき、南極の着陸範囲におけるアクセスしやすさを評価。チームはNASAのスペース・ローンチ・システム、オリオン宇宙船、SpaceXのStarship有人着陸システムの能力も考慮しました。2年間に及ぶ審議の末、南極に近い13の着陸候補地を提示したのです。

このミッションの実施は2026年以降の予定

NASAは、アルテミス3ミッションの打ち上げ日が近づく中で、候補地を絞り込もうとしています。今のところ、同ミッションは2026年以降に実施される予定。特定の打ち上げ可能期間内にしか到達できない着陸地点もありますから、選択の幅があることでNASAはアルテミス3ミッションの打ち上げに1年を通しての柔軟性を持てるようになります。

NASAのSLSロケットは現在、フロリダ州のケネディ宇宙センターにある発射台に設置されていて、無人で飛行するアルテミス1ミッションの打ち上げを待っています。このミッションは現時点で8月29日に予定されていて、9月2日と9月5日が予備の日程となっています。2024年の後半に計画されているアルテミス2は有人のオリオン宇宙船が月へと旅しますが、月面には着陸しません。それはアルテミス3の仕事で、月の南極に男性と女性を送るNASAの計画は早ければ2026年に打ち上げられる可能性もあります。

アポロ計画と違って、アルテミス計画はつかの間の任務のためだけに人類を月面に降り立たせたいわけではありません。月面とその周りに拠点を確立して維持することがゴールです。それが火星への人類初の旅行という遥かに野心的なプロジェクトへの足掛かりとなるでのです。

Source: NASA

NASAのアルテミスプログラムについて、現時点で分かっていることまとめ

NASAの月面計画「アルテミス」の現時点で分かっていることの概要。今年後半には無人宇宙船「オリオン」を伴ったアルテミス1が発射される。

https://www.gizmodo.jp/2022/05/overview-of-nasas-artemis-program.html