ロシアがネット上で仕掛ける情報工作が、「特別軍事作戦」を称するウクライナ侵攻を機に再び注目されている。ロシアに都合の良い情報を交流サイト(SNS)で大量発信し、世論を誘導する作戦だ。「プーチン大統領のシェフ」の異名を取る実業家の情報戦を探った。(サンクトペテルブルクで、小柳悠志)
◆フォロワーは11万人 軍事作戦の意義説く
ロシア北西部サンクトペテルブルクでは、軍事作戦の意義を説く集会が中心部のカフェで毎週開かれている。主催者団体は「サイバー戦線Z」。ゲストには評論家や保守系政治家が招かれる。
記者が訪れた日の集会の題目は「ポーランドはウクライナにとって敵か味方か」。旧ソ連の影響下にあったポーランドが、反ロ・親ウクライナの姿勢を取ることに疑問を呈す内容だ。ポーランドとウクライナを離間させようとするプーチン政権の意向に沿っている。
「ポーランドの反ロ政策は米国が操っている」「ウクライナ人はポーランドなど避難先で怠けてばかり。支援頼みの生活を送っている」
参加した市民はマイクを握り、ウクライナやポーランドに対する辛口の意見を語っていく。議論の内容はSNSで拡散され、フォロワーの11万人余に届く。ウクライナやポーランドについて「ロシアの弱体化を目指す存在」と広める作戦だ。
◆飲み物も料理も格安、カネはどこから?
集会が開かれるカフェは一等地にもかかわらず、飲み物や料理は格安。メニューには「当店のハンバーガーは米国もうらやむうまさ」など、欧米を敵視する言葉が並ぶ。カフェの看板は目立たず、一般客を呼び込んでいるように見えない。集会の資金はどこから来ているのか—。
地元リベラル系メディア「フォンタンカ」によると、サイバー戦線Zは、プーチン氏と親しい実業家エフゲニー・プリゴジン氏が資金提供する情報工作の「トロール(荒らし)工場」の疑いがある。プリゴジン氏が関わっていると米国が指摘する別のトロール工...
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