スプリンクラー作動でオーケストラの楽器ずぶぬれ 被害額は数億円か

山崎琢也 小山裕一
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 静岡県裾野市の市民文化センター大ホールで先月下旬、舞台上のスプリンクラーが突然作動し、演奏直前のオーケストラの楽器の多くが水をかぶった。オーケストラは13日記者会見し、被害の実情と市の対応への不信を訴えた。

 被害を受けたのは「シンフォニエッタ静岡」(焼津市)。市や楽団によると、スプリンクラーから水が出たのは9月24日午後1時ごろ。この日はセンターなどが主催する公演「オーケストラを聴こう!」が予定されており、舞台上には出演する同団の楽器が置かれていた。

 舞台で練習していたコントラバス奏者の土田卓さん(39)の耳に突然、大雨のような「ザーッ」という音が聞こえてきた。急いで舞台袖に引き上げると、天井から水が降る中、楽器を避難させる団員たちの姿が目に入った。手分けして楽器を運び、手元にあったタオルや服で拭いたという。

 団によると、被害を受けたのは少なくとも100点以上。会見した同団の中原朋哉・芸術監督(49)は「探しても同じものがない楽器が多い。楽器がずぶぬれになるのは異例のこと。なるべく修理して使いたいが、できるのかもわからない」と話す。

 被害額は数億円の規模になるというが、個人所有の楽器も多く総額はまだ算出できない。また、避難中に転倒するなどで楽団員5人がけがをしたという。市が1300万円で購入したスタインウェイのグランドピアノも被害にあった。

 市の担当者は「スプリンクラーの点検では機器に故障はなかった」といい、第三者の関与も考えられるとして県警に相談している。ただ、中原さんは「スプリンクラーの操作盤は舞台裏にあり、楽団員は不審者を目撃していない」と、市の主張に疑問を投げかける。

 また、団によると、裾野市の副市長からお見舞いの電話があったが、市から被害の確認や今後の対応についての説明は受けていないという。

 市の担当者は「原因究明に全力を尽くしているところ。究明までに時間がかかるのであれば、補償などについてホールの指定管理者も含めて相談したい」と言う。一方、中原さんは「まずは私たちに誠実に向き合って対応してほしい」と話している。

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