処理パワーあってバッテリーも長いとか夢のPCじゃん!
最近、普通のノートPCを触っていると「dGPU(外部GPU)ほしいな」って思うことが増えました。Adobeなどのクリエイティブアプリやゲームはもちろんですが、最近はブラウザでもGPUで処理をブーストするオプションがあり、チップメーカー各社もCPU内蔵GPUのパワーアップを宣伝しています。
もちろん、ゲーミングPCなどdGPUつきのノートはたくさんあります。ただ、それらのPCはパワー第一で燃費は二の次。モバイルして使おうものなら、ゲームをしなくてもあっというまにバッテリーが空に。dGPUはアイドリング状態でもそこそこの電力を使うらしく、ノートPCの持ち味であるモバイル性にとってはマイナスです。
そんな中で登場したのが、HPのノートPC「HP Spectre x360 16-f1000」(以下 Spectre x360 16)。これはインテルのdGPU「Arc A370M」を搭載した大型のラップトップで、インテルの「Evoプラットフォーム」にも準拠しています。
ということは、dGPUの処理パワーを持ちつつ、Evoのガイドラインのひとつ「バッテリーで長時間駆動する」を満たしているということです。
Arc+EvoのダブルネームPCの実力はどれほどか、HPから実機を借りて2週間ほど使用したレポートをお届けします。
HP Spectre x360 16

これは何?:インテル製のdGPUを搭載した大型ラップトップPC
価格(税込):37万4000円。dGPUや4Kディスプレイではない廉価版は28万9800円
気に入ったところ:高品質なディスプレイ、GPUマシンとして長いバッテリー、よい仕上げのボディ
気になったところ:ゲームはタイトルを選ぶのでGPUがややもったいない感
レビュー機のスペック
CPU:インテル Core i7-1260P
GPU:インテル Arc A370M 4GB
RAM:32GB
SSD:2TB
ディスプレイ:16.0インチ・UHD+(3,840×2,400) OLEDタッチディスプレイ
GPUがパワフルなのにバッテリー長持ち

HP Spectre x360 16を使って最初に気に入ったのが、バッテリーの持ちです。
たまたま、私は近いスペックのHP ENVY 15(Core i7-10750H+NVIDIA GeForce RTX 2060+4K OLEDパネル)をメインマシンとして使っているのですが、体感で明らかにHP Spectre x360 16のほうがロングバッテリーです。
バッテリーベンチマークアプリ「MobileMark 2018」によれば、HP Spectre x360 16の駆動時間は最大9時間。4K解像度のOLEDディスプレイを搭載したマシンとしては長めの値です(HP ENVY 15は「MobileMark 2014」準拠で6.5時間)。
ACアダプタなしでは、ENVY 15では3時間が活動限界といったところ、Spectre x360 16は5時間近くは大丈夫。バッテリーだけで1日フルに使い倒せる…とはいえませんが、外出時にコンセントの近くに陣取る必要は感じませんでした。

USB-C給電に対応しているので、大きな専用アダプタではなく小型の汎用USB-C充電器で充電できるのもなにげにポイント高し。
クリエイティブで活躍するパフォーマンスとディスプレイ


Spectre x360 16が一番活躍するのは、イラストや写真、動画などのクリエイティブワークでしょう。
私の利用範囲ではPhotoshopやLightroomといった画像/写真処理がメインでしたが、GPUの恩恵ははっきり感じられ、写真のプレビューや現像スピードは満足いくものでした。
Spectre x360 16が搭載するArc A370Mの処理パワーは、他のGPUを引き合いに出すなら「GTX 1650 Laptopの少し上」というところ。なので、動画や3D作業もそつなくこなせるはずです。動画や3Dの作業はGPUパワーがあればあるほどいいので、Arc A370Mよりパワフルな選択肢はたくさんあるでしょう。ただ、バッテリー駆動時間を重視するなら、Spectre x360 16は十分検討に値すると思います。
もうひとつ、Spectre x360 16がクリエイティブに向く理由はディスプレイの品質です。


とくにOLEDディスプレイの色域は広く、DCI-P3を100%カバー。さらにアンチリフレクションコーティングで周囲の反射が気になりにくい。2in1スタイルでディスプレイをメインに使うこともでき、タッチペンも標準装備。
16インチ、4Kを少し盾に伸ばした16:10のディスプレイということもあって、写真やイラスト作業はかなりはかどりそうです。
ゲームはタイトルを選ぶ

一方、GPUのもうひとつの活躍の場であるところのゲームは、かなり限定された性能になります。
ベンチマークスコアで見るなら、それなりに最近のタイトルも動かせる…はずなんですが、私の試した範囲ではグラフィックス設定を抑えても『サイバーパンク2077』や『エルデンリング』は10FPS近くに落ち込むシーンがちらほらあり、とても実用的とは言えませんでした(10FPSでパリィは無理!)。
一方、『ソウルハッカーズ2』は求められるグラフィック性能もゆるく、30FPS以上をキープできており、RPGということもあってプレイに支障はなし。タイトルによって遊べる/遊べないがかなりはっきり分かれます。
このあたりはグラフィックドライバのアップデートで今後改善するかもしれません。ただ、現状だとゲームのために買うマシンではないことは確かです。
dGPUとバッテリーが両立するPCはこれから



ブラウザすらもGPUパワーを求めるようになった昨今、dGPUのニーズは高まる一方。なのですが、CPU+dGPUの2頭立ては燃費が悪く、モバイルPCにおいてはバッテリーが犠牲になります。
それに対する答えが「CPUとGPUを同じメーカーでそろえることで高度に電力制御できるようにすること」。Spectre x360 16はインテル製のチップでCPUとdGPUの足並みをそろえ、バッテリーの限界をクリアしようとしています。このCPUとGPUの連携というアプローチは、ライバルのAMDも「AMD Advantage」というパッケージを用意しています。
インテルのArcはまだ登場して日が浅く、ゲームといったアプリではまだその実力を出し切れているとは言えないところ。ですが、クリエイティブ系アプリ中心ならすでに実用レベルで、クリエイティブ・ワークステーションとしてSpectre x360 16は悪くない選択肢です。