【森保ジャパン 光と影】(下)世界より「実は日本人の方が規律やルールが少し緩くて」組織力も上げないと

スポーツ報知
日本代表選手たちに話をする森保一監督

 日本サッカー史上初の8強にあと一歩届かず、2大会連続16強でカタールW杯を終えた森保ジャパンの4年半を検証する連載の最終回は、敗退で見えた日本代表の現在地と、未来へ向けた課題を取り上げる。

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 8強入りの夢が破れたクロアチア戦の翌朝。短い眠りから覚めた森保監督は、ベッドの上で考え続けた。「もっと何かできたことがあったんだろうな。何が足りなかったのか」。指揮官のW杯は、まだ続いていた。

 26年W杯に向け、今回ドイツ、スペインを破った守備重視の“弱者のサッカー”からの転換は、選手たちが口々に挙げた課題だ。鎌田は「本当に世界のトップを目指すなら、今回のようなやり方で勝っても先はない」と言い切った。個々の成長は大前提に、主導権を握り、相手をコントロールしながら攻撃的に勝利を目指す理想の先にしか、ベスト8以上の未来は見えない。

 MF堂安は言う。「理想を求めて、勝ちたい。でも本田さんを先頭に理想を求めて(14年ブラジルW杯で)敗退した話を(当時)経験した選手たちが話してくれた。だからこそ今回の粘り強い守備など、できた部分をベースとして持ちながら、理想を追い求めていきたい」。10年の南アフリカW杯は守備的に戦い16強、ブラジルW杯は「自分たちのサッカー」を掲げて攻撃的に挑んで1次リーグ敗退した。どちらかに振り切る必要はない。同じ過ちを繰り返すのではなく、守備にベースを置きながら、一歩ずつ攻撃的な理想に近づいていく、という考えだった。

 森保監督が語った、欧州と日本で「この4年間で逆転したもの」も重要な示唆だ。「より、欧州のサッカーは戦術的になっている。今までは欧州、世界の方が自由だと感じていたが、実は日本人の方が規律やルールが少し緩くて。欧州で戦う選手の方がチーム戦術、個の役割を徹底しながら、より多くのパターンを持って、その上に個人の対応能力を持っている」。欧州組の選手たちから、もっと細部にわたるチームの約束事が必要、との声もあった。世界の個に、日本が組織力で対抗する、という時代は終わり、より高いレベルでの戦術が求められる時代に突入した。

 足りないものを数えればきりがない。しかしドーハを悲劇から歓喜の地に変えられたか、という問いに、森保監督は「変えられた、と思っています。ドイツ、スペインに勝ち、クロアチアと互角に戦い、素晴らしい景色を選手たちは見せてくれた。世界に学ぶ点はまだまだ多いが、追いつけから追い越せに、本気で選手たちはマインドを変えてくれた」と答えた。ドーハの悲劇から29年。日本サッカーはまた新たな痛みと課題を経て、次のW杯へと向かう。(特別取材班)=おわり=

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