米国カリフォルニア州サウス・レイクタホの廃屋の下をねぐらにするアメリカクロクマ。クマの個体数が増え、人間が居住域を拡大するにつれて、多くのクマが人間のすぐ近くで暮らすことを覚えつつある。けれども長い目で見れば、都会暮らしはクマにとって良いものではない。(2022年7月号「都会に生きる野生動物」より)(PHOTOGRAPH BY COREY ARNOLD)
アメリカクロクマがねぐらから出てきた。まだ眠そうで動きは鈍い。毛はもつれてボサボサしていて、体重は100キロは軽く超えていそうだ。
このクマの冬のねぐらは原野ではない。米国カリフォルニア州サウス・レイクタホの廃屋の下にある。ここは人口の多いリゾート地で、ゴミや食べ物が豊富にあるため、クマたちの体重は野生の個体に比べて平均約25%も多い。
近年、人間と動物が住む場所が接近しつつあるが、人々はそのことにあまり気づいていない。コーリー・アーノルド氏が撮影したこの写真は、こうした動物たちの存在を身近に感じさせてくれる。ナショナル ジオグラフィック編集部が2022年のお気に入りとして選んだ21枚の動物写真のうちの1枚だ。
もちろん、ほとんどの動物は野生で暮らす方がうまくやっていける。人間がそれに協力できるならもっとよい。スペインとポルトガルでは大規模な繁殖と再導入によって野生のスペインオオヤマネコを増やすことに成功しているし、インドでは密猟対策を強化することでヒョウの個体数を増やしている。海洋保護区を設けて漁獲を制限すれば、サンゴ礁の美しい魚を増やすことだってできる。
フォト・エディターのアレクサ・キーフは、「私たちの生活の中で動物たちが果たしているすべての役割」を見てほしいという思いから、数千枚の写真の中から今回の21枚を選んだという。「地球上の動物たちの多様な暮らしや、私たちとの関わりを見せてくれる写真ばかりです」
フィリピンのベルデ島水路に広がるサンゴ礁で、コンビクトブレニーの大群の上を漂うアカモンガラの群れ。「コーラル・トライアングル(サンゴ三角地帯)」と呼ばれるこの海域は汚染や乱獲などの脅威にさらされているが、自然保護活動家たちの努力で観光業や持続可能な漁業が広がりつつある。(
2022年6月号「フィリピン 輝きが陰るサンゴ礁」より)(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET)
フィリピン北部のアニラオ沖で、卵を守るためにオトメベラと死闘を繰り広げた後、最後の力をふりしぼって巣に覆いかぶさるゴマモンガラ。サンゴ礁は、多種多様な海洋生物と、それを見ようとするダイバーたちを引きつけている。(
2022年6月号「フィリピン 輝きが陰るサンゴ礁」より)(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES)
アニラオ沖でガラス瓶の中からカメラを見据えるハゼの仲間、ゴールデン・ゴビーのつがい。海洋汚染は脅威だが、見つけたものをすみかにするものもいる。(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET)
キューバでは鳥の鳴き声の美しさを競うコンテストがさかんで、ハバナのコンテスト会場は、コロナ禍以前は鳥を売買したり眺めたりしにくる人々で賑わっていた。しかし、美しい声で鳴く鳥への需要の高まりとともに、違法に捕獲しようとする人々が増え、野鳥は危機にさらされている。写真は鳴き鳥が舌から餌をついばむ様子を見せる調教師。(
2022年4月号「美しい鳴き声ゆえに」より)(PHOTOGRAPH BY KARINE AIGNER)
アフリカ、ガボンのロペ国立公園で、両親と一緒に歩く幼いマルミミゾウ。ゾウたちは代々、果物が豊富な熱帯雨林に多くの道を切り開き、食べられる果物はどれか、どこで採れるのか、いつ熟すのかといった知識を受け継いできた。地球温暖化の結果、公園内にある樹木の多くが実をつけにくくなり、ゾウの餌が不足しつつあることが、研究により明らかになっている。(
2022年5月号「マルミミゾウの森」より)(PHOTOGRAPH BY JASPER DOEST)
インド南部のナガラホール・トラ保護区で、霧の立ち込める冬の朝、花の咲いたデイゴの木の上にいるヒョウのつがい。密猟対策により公園内の獲物が増えたことで、トラやヒョウの個体数も増えている。(
2022年3月号「よみがえる インドのビッグ・キャット」より)(PHOTOGRAPH BY SHAAZ JUNG)
タツノオトシゴもパイプフィッシュもシードラゴンも、295種からなるヨウジウオ科の魚である。この科の魚たちは、長い吻、鎧のように硬い表皮、オスが卵を抱くことなどの共通の特徴をもつ。写真のリボンドパイプフィッシュのように擬態の名人も多い。(
2022年4月号「不思議なタツノオトシゴ」より)(HALIICHTHYS TAENIOPHORUS, BIRCH AQUARIUM)
ウガンダではセネネ(バッタの意味)という昆虫が人気の食材になっていて、農家の人々が大掛かりな仕掛けを作って捕獲している。写真は、昆虫の飛び方を捉えるためにスローシャッターで撮影したもの。(
2022年3月号「空飛ぶタンパク源を捕まえる」より)(PHOTOGRAPH BY JASPER DOEST)
夏、カナダのマニトバ州チャーチルの近くのヤナギランの群落で眠るホッキョクグマ。ホッキョクグマは水中で過ごす時間が長いため、海洋哺乳類だと考える生物学者も多い。しかし、氷や雪が少ないときは、この個体のように内陸で過ごす。(
2022年9月号「クマがいる北極圏の夏」より)(PHOTOGRAPH BY MARTIN GREGUS, JR.)
次ページ:あと11点
ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。
*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。
おすすめ関連書籍
2022年12月号
写真が記録した1年: 社会・文化/動物・保護/科学・探究/環境・自然
2022年12月号は「写真が記録した1年」と題する特別編集版をお届けします。今の世界、今の時代を記録する世界中の写真家たち。「社会・文化」「動物・保護」「科学・探求」「環境・自然」のカテゴリーから、えりすぐりの写真と心を揺さぶる物語を紹介します。
特別定価:1,250円(税込)
Photo Stories 一覧へ