ヤジ排除の適法性、道警側が改めて主張 警察官「原告は危険人物」
2019年の参院選で、札幌市で演説中の安倍晋三首相(当時)に男女2人がヤジを飛ばし、北海道警の複数の警察官に排除された問題で、この2人が憲法が保障する表現の自由を侵害されたとして、北海道を相手取り慰謝料などを求めた訴訟の控訴審の第1回口頭弁論が22日、札幌高裁(大竹優子裁判長)であった。
3月の一審・札幌地裁判決は、2人のヤジは内容などから「公共的・政治的な表現行為」と認定。2人が聴衆に危害を加えられるなどの具体的な危険はなかったとして、警察官による排除は警察官職務執行法の適用要件を満たしておらず、表現の自由を侵害する違法な行為だったとして、道に計88万円の賠償を命じた。道は4月に控訴した。
道側はこの日、原告男性(34)がJR札幌駅前の演説会場で排除された際、そばにいたという自民党関係者の陳述書を提出。「二度、原告男性を手で押した。警察官が男性を移動させなければ取っ組み合いになっていたかもしれない」との陳述をもとに、「暴行、傷害などの犯罪が発生する高度の危険性が切迫していた」と指摘。警職法4条に基づき原告男性を避難させたとして、排除の適法性を主張した。
これに対し原告側は、陳述書を出した自民党関係者と原告男性との間に利害の対立があり、「陳述内容が原告に不利な方向にゆがんでいる可能性が高い」と指摘。暴行の兆候があったのなら「警察官らが制止すべきは原告でなく自民党関係者だ」と反論した。
安倍氏が札幌三越前に移動した後に再び原告男性が排除された場面については、道側が「再現動画」を提出した。仮に原告がバッグから物を取り出して投げようとしたら、物を取り出してから警察官が阻止しようとしても間に合わないと主張した。
一方、原告側は「男性が物を投げようとしたかが争点なので、何らの事実も立証できない」と批判した。
また、原告女性(27)につきまとい行為をしたとされる女性警察官の証人尋問も行われた。
女性警察官は、原告女性が「増税反対」と叫んで警察官に抵抗するのを見て、「危険な人物だと思った」と証言。原告女性が「総理に直接言いたい」と話したことなどから、「原告が再び聴衆のもとに行き、トラブルになると思った」と理由を説明した。
原告代理人の弁護士から「原告の発言の内容が会場にふさわしくないと考えたのではないか」と尋ねられ、女性警察官は「そうです」と答えた。その後、道側の弁護士から同様の質問を受けると「原告の発言の内容は関係ない。大声で暴れていて危険だと思った」と証言した。