全国の大学では国による統制やトップによる独裁化が進み、弊害としてハラスメントの横行、非常勤教職員の大量解雇などの問題が起きている。背景にある大学政策と、大学崩壊の現状をレポートする。
国家による「支配」
大学は教育と研究の場であり、社会の規範となるべき存在だと多くの人は思っているだろう。ところが今、全国の大学関係者から「大学が壊れてしまった」と嘆く声が聞こえてくる。

「しかも、今後さらに大学界に激震が走ると考えられています。莫大な予算を投入する代わりに政財界が大学運営の舵取りをする『国際卓越研究大学』の制度が、令和6('24)年度からの導入を目指して進められているからです。経済安全保障に大学の教育と研究が組み込まれるなど、大学を国策に沿って統制しようとする動きも加速しています」(国立大学関係者)
大学のあり方を大きく変えてしまったのは、小泉政権下で行われた'04年の国立大学法人化と私立学校法の改正だった。
国立大学は法人化により自主性や独立性が確保できるとされていたが、実際には運営費交付金が10年にわたり削減され、自主性も独立性も侵害されている。学長選考では教職員による選挙が廃止され、「学長選考会議」が決定する仕組みに変わり、事実上、教職員の意向は学長選に反映されなくなった。
私立学校法の改正では学長ではなく、経営責任者である理事長を学校法人のトップに位置づけたことで、思いのままに大学を運営する理事長も現れている。