無罪なのに戻らない運転免許 職失い、一家離散…「誰でも起きうる」

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中山直樹
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 6年前、2017年2月の深夜。

 運送会社で働いていた福岡市の女性(44)は、仕事で軽トラックを運転していた時、バイクと衝突事故を起こした。

 左車線から突然バイクが割り込んできたことが原因だと思った。だが「女性の過失でバイクの男性にけがをさせた」として、1年以上経った翌18年5月、自動車運転死傷処罰法違反の罪で在宅起訴された。運転免許も取り消しとなった。

 生活は一変した。

 17歳と18歳の息子たちを育てるシングルマザーだったが、免許を失い、会社を辞めざるをえなくなった。収入が断たれ、育ち盛りの息子2人の生活費さえままならない。息子を知人に預けるなどして一時的に一家はバラバラになった。当時住んでいた家は、家賃が払えず、強制退去となった。

 再就職をしようとしても、免許がないことを理由に何度も断られた。

 生活に苦しむ中でも、警察の取り調べは何カ月も続いた。「あなたのトラックが突っ込んだんだ。相手は大けがをしている」

 逮捕された容疑者には国選弁護人がつくが、女性のように在宅で捜査されている場合、起訴されるまで国選弁護人は割り当てられない。何度も問い詰められ、心が折れた。言われるがまま調書にサインした。

 「バイクが割り込んできた。避けようがなかった」。弁護士にそう説明できたのは、在宅起訴からしばらく経ってからだった。

無罪→免許取り消しのまま 驚きの理由

 それでも刑事裁判では、防犯カメラの映像や目撃証言から、女性の主張通り、バイクが急加速で割り込んできた可能性が認定された。女性の調書も「信用性がない」と証拠採用されず、20年5月、無罪を勝ち取った。

 これで元の生活に戻れる――。

 だが、運転免許はいつまで経…

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この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減