Text by Thomas Piketty From Le Monde
まず言っておきたい。フランスのマクロン大統領は時代錯誤を犯しており、私たちの時間を無駄にしている。
マクロンが打ち出す政策は2020年代にまったく適合していない。まるで頭のなかは、1990年代から2000年代前半までの市場に幸福感が漂っていた時代で止まってしまっているかのようだ。2008年の金融危機や新型コロナのパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻が起きる前の世界観で固まってしまっている。
いまの時代の特徴は、格差が拡大し、一部の資産家が空前絶後の繁栄を手にし、気候変動とエネルギーの危機に見舞われていることだ。教育と医療に投資をし、公正な経済システムをフランス国内、欧州内、そして世界全体で実現するのが急務となっている。それなのにフランス政府は、そんなことなどお構いなしに、いまも時代錯誤の反社会的政策を続けているのだ。
もはや「現実」は隠せない
2019年の時点でマクロンが打ち出していたのは「普遍的年金制度」だった。業種ごとに何十種類もある年金制度は複雑すぎるので、年金制度のルールを一本化しようという案だった。しかし、これには問題があった。このときマクロンが提唱した普遍的年金制度が非常に不平等であり、現役時代の大きな格差を死ぬまで続けようとするものだったからだ。
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