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目次/ INDEX
釣りの経験がほとんどない人にとって「海釣り」は、お金と手間がかかる遊びのイメージがある。
まず道具の問題。竿だけじゃダメなことは素人でも分かる。
加えて場所の問題。釣りが禁止されていない海辺を探すのはけっこう骨が折れそうだ。
時間も朝が早く、出かけるにはちょっとした気合いが必要だろう。
だが、釣り好きのとある知人が
「会社帰りにもふらっと手軽に、コスパ良くできる海釣りもありますよ」と教えてくれた。「サビキ釣り」というらしい。
とある知人こと大西さん(ぬこまた釣査団)。30歳を過ぎてから脱サラし、現在は釣りに明け暮れる生活を送っている。ホームセンターや100円ショップの釣具を駆使したり、現地で採取した生き物をエサに用いたりと、コスパを重視した釣りに定評がある
サビキ釣りは堤防などからアジやサバ、イワシといった小型の回遊魚を狙う釣り方。コマセ(撒き餌)を海中に撒いて魚をおびきよせ、サビキという複数の疑似餌針がついた仕掛けで釣り上げる。
大西さんいわく、サビキ釣りは難しい釣り方ではなく、魚がうまく集まりさえすれば僕のようなビギナーでもかなりの釣果が期待できるという。しかも、道具は釣具店へ行かなくとも、ホームセンターでそろえられるそうだ。
そう聞いたら、竿さえ持っていないのに釣りがしたくなってきて、気がつくと手ぶらで海へ向かっていた。
というわけで大西さんと一緒に「カインズ横須賀久里浜店」で釣具の買い出しへ。申し遅れましたが、向かって右がこの記事を書いているライターの榎並です
実はこのカインズ横須賀久里浜店、海に近いだけあって、首都圏近郊ではトップクラスに釣具コーナーが充実している。サビキ釣りに必要な一式も全てそろうという。
さすがの品ぞろえ
竿もかなりの種類があった。安いのは4000円くらい、一番高いので1万円くらい
特にサビキ釣りの仕掛けのラインナップはすごい。いろいろな種類があって迷うが、とりあえずウキやオモリ、エサを入れるカゴまで全部セットになったものを選んでおけば良いようだ
コマセ(撒き餌)もけっこう種類がある。ものによりエサの粒感(サイズ)、粘度、色、海中での拡散の仕方などが異なり、上級者は海の色や時間帯によって使い分けるが、基本的にサビキ釣り用として売られているものなら何を使っても問題ないとのこと。なお、サビキ釣りでよく使われるのは「アミエビ」というプランクトンのエサ。4〜5時間くらいの釣りなら2kgくらいあれば十分
大西さんは自分用に専門店で生のアミエビを調達していた。きれいな海で使うとサビキの針と混ざりやすく、仕掛けをよりカモフラージュさせられる
大西さんのアドバイスを受けながら品定めする。「ホームセンターにしか置いていないアイテムも、けっこうありますよ。以前、サビキ仕掛けが54円で売られていたのは驚きました」
最近のホームセンターや100円ショップで買える釣具はかなり進化&充実していて、大西さんも重宝しているという。ちなみに、大西さんクラスになると、仕掛けなどの釣具を自作したりもする。その材料の調達先も、大抵はホームセンターや100円ショップだそうだ。
大西「自作の仕掛けについては『既製品よりもコスパの良いもの』『面白いもの』をコンセプトに作っています。たとえば、カゴ釣り(※)で使うカゴは、100円ショップのアイテムで作れてしまう面白さと、それでも釣れるコスパの両面で考えました。100円ショップのプラカゴ、ちょい投げ仕掛け、片天秤などを材料に作ったのですが、本来の用途とは全く異なるアイテムの組み合わせで、ちゃんとアジなどが釣れたのがうれしかったですね」
(※)カゴ釣り……コマセ(撒き餌)が詰まったカゴを沖に投げて、回遊するマダイや青物、アジ、サバなどを狙う釣り方。
大西さんが自作した仕掛け
大西さんいわく、特定の魚を釣るための仕掛けはいくらでも売っているという。しかし、「この魚がこの仕掛けで釣れるの?」といった意外性やコスパを突き詰めるのも釣りの楽しみ方の一つ。大西さんのようにつねに違う釣り方を模索するなど探究心を持ち始めると、どんどん深みにはまっていくようだ。
大西さんに選んでもらい、竿、リール、サビキ仕掛けセット、予備のカゴ、予備の仕掛け、予備のオモリ、コマセ(撒き餌)を購入。鈴は竿先につけると、竿を置いたときも音でアタリを知らせてくれる
道具はそろった。次は場所だ。サビキ釣りは堤防からアジなどを狙えると書いたが、なかには釣りが禁止されていたり、立入禁止のエリアもある。また、僕のようなビギナーの場合、落下事故防止のため鉄柵のある安全な堤防が良いだろう。
今回はこれらの条件を満たす「横須賀市海辺つり公園」にやってきた。カインズ横須賀久里浜店からは車で15分くらい。入園料は無料だ(車の場合は別途駐車場代)。
徒歩だと、京急堀ノ内駅から10分ほど(Wikimedia Commonsより)
時刻は18時過ぎ。ここから閉園時間の22時まで、サビキ釣りでアジなどを狙う。なお、サビキで最も釣れる時間帯は、夕方の日没前後と夜明け付近。日没前後は釣り用語で「タ(ゆう)マヅメ」といわれ、足元まで回遊魚が接岸するという。この日の横須賀の日の入りは19時なので、まさに今から1時間が「爆釣チャンス」だ。ちょうど良い時に来れた。
その前に、竿のセッティング方法を教わる
竿にサビキの仕掛けをつける。スナップという金具にリールから出した釣り糸を結ぶだけなので簡単だ。「仕掛けが外れなければどう結んでもOK」(大西さん)だが、スナップに通した糸を折り返してメインの糸に巻き付けていくクリンチノットという結び方が簡単で外れにくいとのこと
カゴの8〜9分目くらいまでアミエビを注入する。チューブタイプのものが入れやすい
準備OK。さあ釣るぞ
サビキ釣りは主に「足元に仕掛けを落とす」やり方と、「仕掛けを遠くに投げ入れる」やり方に分かれる。さらに、「投げサビキ」や「ぶっこみサビキ」など、狙う魚の種類やサイズによって最適な釣法は変わるという。
大西「たとえば、ぶっこみサビキであれば、海底付近を遊泳する大きなアジを狙うことができます。僕も今から5年前、砂浜からぶっこみサビキで、37cmの巨大なアジを釣りました」
真ん中が37cmのアジ。サビキ釣りでもこれだけ大きなアジが釣れる。写真提供:大西さん
大西「船釣り以外で、こんなに大きなアジが釣れるのかと驚きましたね。堤防で手軽にできる釣りから、デカいアジを狙える専門性の高い釣りまで、幅広い楽しみ方ができるのもサビキ釣りの魅力です」
大西さんは今回も「ぶっこみ」で沖合の大きなアジを狙う
「ぶっこみ」は大物を狙えるのも魅力だが、シュビ!と竿を振ってキャストするのがかっこいい。しかし、不器用な僕は投げ方をうまく習得できなかったので、今回は足元を攻めることにした。
サビキを足元の海中に落として、狙うタナ(魚が遊泳している層)が決まったら、竿を2〜3回しゃくってカゴの中のコマセを海中に放出。3〜5分くらい待ってアタリがなければ、また竿をしゃくる。カゴの中のコマセがなくなるまでこれを繰り返す
魚の群れがうまくコマセに寄ってくれば、全ての針に魚が掛かる、いわゆる「鈴なり」も夢ではないという。時には鈴なりを通り越して「無限イワシ」状態(無限にイワシが釣れる状態)になることもあるとか。
しかし世の中そんなに甘くない。開始から1時間は無限どころか魚の気配すらない状態が続く
東京湾の魚が絶滅したのかと思うくらい何も起こらないため、目標を爆釣から「せめて一匹」に下方修正した。
アタリが来るまでの間、改めて大西さんにサビキ釣りの魅力を聞いてみた。
大西「確かにサビキ釣りは手軽に始められますが、じつに奥が深いんです。釣る場所の状況、時間帯、狙う魚の種類とサイズなどによって適切な仕掛けは異なり、その選択によっては釣果がゼロから100まで変わってくる。さらに、釣り場によっても針の色、ハリス(針に結ぶ糸)の太さ、仕掛けを投げ入れるポイント、タナなどさまざまな要素を考慮する必要があり、それを考え始めるとどんどんサビキの沼にはまっていくんです」
ぜひ僕も「サビキ沼」にはまりたい。しかし、ともあれまずは最初の一匹だ。
……と言ってるそばから、大西さんにこの日初の釣果が
アジではなく、かわいいサイズの「アナハゼ」だった。アジなどの回遊魚以外が釣れるのもサビキ釣りの魅力
釣りは他人と競争するものではないと思うが、やはり先に誰かが釣ると対抗意識が芽生える。
負けてられるか
ちなみに、釣りは「運」の要素が大きいと素人の僕などは考えがちだが、じつは経験の差が大きくものを言う。サビキ釣りであっても、それは変わらないようだ。
大西「今年の4月、新潟県まで大型のアジを釣りに行きました。サビキ釣りに自信もついてきたので、これまでの経験を他県で試したいと思って。そこは釣り公園なのに、40cm近いデカアジまで釣れる聖地のような場所で、私も爆釣必至だと思って向かいました。しかし、いざ釣りを始めると私の右側にいる方だけが入れ食い状態になり、私は1時間に1〜2匹程度しか釣れない……。最終的に私が10匹、その人は70匹くらいと釣果に圧倒的な差が出ました。ちょっとやそっとでは埋められない経験値の差を感じましたね。同時に、サビキ釣りってやっぱり奥が深くて面白いなと」
大西さんのほろ苦エピソードにしんみりしつつ、釣りは続く
僕の竿に待望のアタリが来たのは、釣りを開始してから1時間半後だった。
活きの良いミニカサゴちゃんが釣れた
狙っていたアジではないが、正直釣れればなんでもうれしい。考えてみれば、海で魚を釣ったのはこれが人生で初めてだ。魚が針にかかった瞬間のビビビビっという感触は、何度でも味わいたくなるほどクセになる。
日が暮れて爆釣タイムは終了したが、どうしてもアジを釣りたいので続行
暗くなってきたので夜釣り用の「ぎょぎょライト」を竿先にセット。これもカインズに売っていた
しかし、釣りの神に見放されたのか、先ほどのカサゴから、パッタリとアタリが止まってしまった。大西さんが釣ったヒトデがこの数時間のハイライトだ。
ヒトデフィニッシュはできれば避けたい。
そんな願いが天に通じたのか、閉園1時間前というところで久しぶりのアタリが来た。この日一番の大きな手応え。ついにアジか。アジなのか。
はやる気持ちをおさえながらリールを巻くと……
フグだった。20cmを超えるサイズだったので大物には違いないが……
しかし、このフグが幸運を呼び込んだのか、ここから閉園時間まで立て続けにアタリが来る。
カタクチイワシ
からのカタクチイワシ
そしてカタクチイワシ
まさかのカタクチイワシ三連発。なるほどこれが無限イワシか。
大西さんによれば、日中は警戒して岸壁に寄ってこない魚も、夕方から夜にかけて海が暗くなると、群れをなして接岸してくることがあるという。
魚さえ寄ってくれば高確率で釣れるのがサビキ釣り。根気よくコマセを撒き続けたり、アタリが来なければ場所を移動するなどして、いかに魚の群れをとらえられるかが肝のようだ。
大西さんは2匹同時にゲット
イワシではなく、小さなメバルだった。つぶらな瞳がかわいい
というわけで、この日の釣果は以下の通り。
狙ったアジは釣れなかったが、イワシやカサゴ、メバルなどメジャーな魚(+ヒトデ)がしっかり見られて、満足だ。
手ぶらで行っても、初期費用は道具込みで1万5000円〜2万円くらい。次回からは撒き餌代だけで釣りができる上に、高度な技術がなくてもそこそこ釣れる。なるほど、確かに海釣りの入門編としてサビキ釣りはもってこいだ。
「また明日来たい」と思えるくらいには楽しかった
ちなみに、サビキ釣りのベストシーズンはサバやアジ、イワシが岸壁近くまで回遊してくる6月から11月にかけて。この夏は、サビキ釣りで海釣りデビューしてみませんか?
取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
写真:小野奈那子