2023年11月24日に開業することが決まった、東京都港区の大規模再開発「麻布台ヒルズ」。その最も重要な構成要素の1つが住宅だ。全ての街区にコンセプトが異なる住宅を設け、個性的なライフスタイルを提案する。
住宅は合計で約1400戸ある。森ビル(東京・港)の辻󠄀慎吾社長は、「一度に1400戸を供給するのは、当社にとって大きな挑戦になる」と打ち明ける。住宅の専有面積は約18万2800m2、居住者数は約3500人を想定している。
住宅ができる部分は、A街区に立つ高さ約330mの超高層ビル「麻布台ヒルズ森JPタワー」の地上54~64階と、B街区の「麻布台ヒルズレジデンスA」(B-2街区)の14~53階と「麻布台ヒルズレジデンスB」(B-1街区)の6~64階、そして低めの施設が並ぶC街区の「麻布台ヒルズガーデンプラザレジデンス」の6~8階である。
ただし、注意したいのは、森ビルは23年7月3日に「麻布台ヒルズのA街区とC街区が竣工した」と発表していることだ。逆に言えば、レジデンスAとレジデンスBがあるB街区は、その時点では竣工していない。
それでもレジデンスAが建つB-2街区は、23年8月下旬時点ではほぼ完成している。レジデンスAはまもなく竣工し、23年冬ごろには住宅の営業を開始する見込みである。問題はレジデンスBがあるB-1街区で、施工者の三井住友建設が手掛けている工事は大幅に遅れている。竣工はだいぶ先になりそうだ。
住宅の中で最も注目を集めているのが、日本一の高さになる地下5階・地上64階建ての森JPタワーの最上部を占める超高級分譲住宅「アマンレジデンス 東京」である。すぐ近くに立つ高さ333mの東京タワーの先端部を、住戸の窓からほぼ真横に眺めるような高さに位置する。
森ビルは、世界有数のラグジュアリーホテルを展開する「アマン」とパートナーシップを締結。アマンにとって日本初となる分譲住宅を麻布台ヒルズで供給する。「アマンに住める」わけで、熱狂的なアマンファンでなくても興味は尽きない。インテリアデザインは、グレン・プッシェルバーグ氏とジョージ・ヤブ氏によるヤブ・プッシェルバーグ(Yabu Pushelberg)が手掛ける。
アマンレジデンス 東京は11層のフロアに、2~6のベッドルームを持つわずか91戸を用意する。住戸の価格は20億円前後と噂されている。最上階の住戸は200億円とも300億円ともいわれ、いずれにしても日本のタワーマンション住戸の最高額を大幅に更新する見通しだ。
もっとも、森ビルはアマンレジデンス 東京の価格を含めた住戸の詳細を公表していない。関心を示す国内外の富裕層に対し、個別に営業をかけている模様だ。91戸のうち、既に営業活動を開始している住戸については、「引き合いが大きい」と森ビルの辻󠄀社長は手応えを感じている。
約20年前、同じ港区に森ビルの「六本木ヒルズ」が誕生し、そこに住む人たちは成功者の象徴として「ヒルズ族」と呼ばれた。ネットバブルの勝者や芸能人などが多数含まれていたといわれる。そのさらに上をいく今回のアマンレジデンス 東京の住人は、スーパーヒルズ族とでも言うべき限られた超富裕層になるのかもしれない。
購入者が期待するのは、アマンのホテルに毎日宿泊するような生活を送ることだろう。居住者とそのゲストは、54階と56階にあるティールームやライブラリー、リーディングルーム、ラウンジ、バー、専用シェフがいるプライベートダイニングルームなどの施設を利用できる。約1400m2の広さがある「アマン・スパ」もあり、25mプールを完備する。
森JPタワーの下層部には、学校と病院もある。暮らすうえでは申し分ない。地下1階から地上7階に、約740人が通えるインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン東京」が23年8月30日に先行で開校する予定だ。5~6階には診療所「慶応義塾大学予防医療センター」も入居し、同年11月6日から検査を開始。人間ドックなど予防医療に力を入れる。