リクルートが運営する結婚情報サービス「ゼクシィ」は2023年12月1日、JR渋谷駅近くで同性カップルや事実婚のカップルを起用した広告の設置を始めた。
ゼクシィは1993年5月に創刊。2023年5月に30周年の節目を迎えたことから、キャッチコピーを「あなたが幸せなら、それでいい。」へと一新し、初めて性的マイノリティ当事者を広告に起用した。
ゲイカップルなど8組を起用

創刊30年を記念した広告には8組のカップルを起用した。結婚している男女カップルのほか、レズビアンカップル、ゲイカップル、事実婚の男女カップルが登場する。
広告の種類は期間によって異なり、12月1〜15日にJR渋谷駅周辺、12月11〜24日に原宿WILDPOSTING、12月5~2024年1月5日に中目黒の蔦屋書店で掲示する。
4月発売号で「事実婚」含む特集
「同性カップルが挙式する場合、『親だけでなくおばあちゃんへの説明が大変だった』とか『結婚式場から冷たい反応をされて心が折れた』という話を聞きました。目の前で結婚式を諦めている人がいる。それがこのキャンペーンを考えた始まりです」
ゼクシィ統括編集長・森奈織子氏はそう話す。
「結婚の代名詞」とも言われるゼクシィだが、ここ最近は“従来の結婚”とは違うあり方を積極的に取り上げてきた。
2023年4月発売号の特集では、初めて大々的に事実婚にスポットを当てた。夫婦別姓のために法的には結婚しない事実婚を選んだカップルの声や、事実婚と法律婚の違い、事実婚に関する手続きなどを紹介した。

この特集に関しては、事実婚を選択したという読者の女性から「名字が変わったり、新郎の名前を必ず先に書いたりする文化が気になっていた。多様なあり方を打ち出してくれてうれしい」というメールが届くなど反響があったという。
また2023年5月発売号では、「ふうふのきほん宣誓書」という企画を掲載。この企画では、結婚を考えているカップルだけでなく、事実婚カップルや同性カップルを念頭に置き、「一緒に生きていくと決めたふたりの決意を記すという行為を、新たなカルチャーとして提案」したという。
時代とともに変わってきたゼクシィ
「これまでもゼクシィは、時代の変化に応じた訴求を続けてきた30年の歴史がある」と森氏は言う。
森氏によると、1993年の創刊当時は、親が結婚式場を選ぶことも珍しくなかったが、その後はカップルで式場を選ぶように時代が変わっていった。
また「結婚式は花嫁が準備するもの」という風潮が根強かったため、2009年には新郎向けの「彼専用ゼクシィ」も作成した。
2013年からは「プロポーズされたらゼクシィ」のキャッチコピーを使い、これまでの結婚式場探しのイメージから、より前段階の「結婚準備」を含めた情報提供にシフトしてきた。
「2017年以降は、『結婚しなくても幸せになれる時代』という言葉をCMでも使いました。
性的マイノリティに限らず、国際結婚や歳の差婚、再婚などさまざまな結婚の形があります。30年という節目のキャンペーンを打ち出すにあたり、結婚に対してさまざまな壁を感じている方々を応援したかった」(森氏)
同性婚の課題が見えにくくなる面も
ゼクシィを運営するリクルートは2023年6月、日本における婚姻の平等に賛同する企業を募るキャンペーン「Business for Marriage Equality」への賛同を表明している。
ただし今回のキャンペーンのように、同性カップルを含めて「あなたが幸せなら、それでいい。」と打ち出すことは、日本における同性婚の課題を見えにくくする面もある。
日本では同性婚が法律では認められておらず、男女カップルの事実婚とは違い選択肢が与えられていないのが現状だ。前提が異なるため、同じようにくくることはできない。
「すぐに法律を変えることは難しいと思います。
ですが法的に結婚ができない同性カップルだからこそ、結婚式に意味があると考えるカップルは少なくありません。そのための情報が足りていないという声も多くあり、その声に答えていきたいと思っています」(森氏)