その異様なセックスは、巨大すぎるペニスが原因。
コウモリはその不気味な姿や逆さまで吊り下がるなど、他の哺乳動物とはちょっと奇妙なヤツっていう立ち位置ですが、さらに奇妙なことが新しい研究でわかりました。
体の割にデカすぎるペニス
コウモリ研究チームは、コウライクビワコウモリ(Eptesicus serotinus)のオスの特徴的なイチモツに興味を持ち、研究することに。
スイスのローザンヌ大学の研究者でチームのメンバーであるNicolas Fasel氏は、「偶然、このコウモリの陰茎が異様に長いことに気づいてから、いつも『どうやって機能しているんだろう?』と思っていました」と述べています。
Fasel氏はさらに、「まず、チームはこのコウモリも、犬のペニスのように貫通後に膨らんで一緒にロックされるのか、または中に入れることができないのかもしれないと考えましたが、哺乳類で交尾をせずに生殖する種はこれまで聞いたことがありませんでした」と語りました。
コウモリの生殖は自由自在
コウモリは哺乳類の中では最も数の多い種と言われていて、哺乳類の約20%を占めています(ちなみに一番多いのはネズミなどのげっ歯類)。
しかし、夜行性であまり明らかになっていない生態から、まだまだ知られていないことが多いのです。
例えばある種では、コウモリのオスは冬眠前に収集した精子を保存する能力があるので、春まで待ってから子作りを始めるのです。
また他の種では、受精した胚の発育を、条件が良くなるまで遅らせることができたりします。食べ物がもっとある時期まで待つなど、妊娠が成功する条件が整うまでの遅らせることができるんだそうです。
交尾せずに交尾?
研究チームは、ウクライナのコウモリのリハビリセンターとオランダの市民科学者Jan Jeucken氏の協力を得て、このコウモリが日常生活でどのように行動しているかがわかる映像を分析。
映像にはたくさんのコウモリ同士の行動が含まれており、チームは97回の交尾を観察。そしてコウモリが貫通的な交尾をしていないことがわかったのです。
その代わり交尾プロセスとして、オスのペニスはメスのコウモリの膣に挿入する前に膨張し、交尾中はオスはメスの首の後ろに掴まり、ペニスでメスの陰部を覆っているしっぽの膜を払いのけ、その後ずっと異様に長いそのペニスを押し付け続けていました。しかもそのひたすら押し付ける行動は、平均で約53分続きました。最も長かったのは驚愕の12時間以上でした。
このチームの研究結果はジャーナル誌Current Biologyに掲載されています。
絶対に入らない構造
チームはまた、ラボで生きたコウモリと死んだコウモリを研究し、他の生殖器に関連するいくつかの特性を確認しました。
例えばオスのペニスはメスの膣よりも約7倍も長いこと。そして、ペニスの先はハート形であり、膣の開口部よりも約7倍も大きいことなどもわかっています。
もともとどうがんばっても入らない構造なんですね...。メスの子宮口も異常に長く、これにより精子を保存したり、または精子を選んで受精させているのかもしれないとのことです。
Fasel氏はこう述べています。
「コウモリは飛ぶためと昆虫を捕まえるためにしっぽの膜を使います。メスのコウモリも自分の下半身をしっぽの膜で覆ってオスから身を守ります。
しかし、オスは巨大なペニスでその膜を乗り越え、陰部に到達することができるのです」
研究チームは、現時点ではコウライクビワコウモリがこの方法で交尾するということを間接的に示しているだけだと考えているようです。
メスのコウモリの腹部が濡れていたことから精液の存在を示唆するものの、それが本当に精液であって、さらには妊娠につながったことを証明することはできていないからです。
チームは確実な研究を進め、自然な環境でのコウライクビワコウモリの交尾を観察していきたいと考えているとのことです。また、この交尾方法が他のコウモリの種でも行なわれているのか調査していきたいそうです。