学童職員足りない、給与低く人材流出「暮らしていけない」…待機児童解消の壁に
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非常勤頼み、質の確保課題
共働き家庭などの小学生を預かる「放課後児童クラブ」(学童保育)が、人手不足に陥っている。低い給与など待遇面の不満から人材の流出が後を絶たないためで、待機児童の解消に向けた受け皿整備の足かせになっている。専門家からは国や自治体に対策を求める声が上がる。(山下真範)
残業300時間

「子どもや保護者のためにと思って続けてきたが、もう限界だ」。大阪府内の自治体の学童保育で非常勤職員として働く50歳代女性は、そう訴える。20年以上勤めているが、転職を考え始めたという。
勤務は基本的に午後1時から午後6時半で、勉強や食事の指導だけでなく、児童同士のトラブル解決や、児童ごとの指導計画の作成などにも追われる。
学校が長期休みに入る夏や冬は、朝から児童を受け入れる。残業は年300時間超で、法定上限(年360時間)に迫るが、給与は残業代も含めて多い月でも約30万円にしかならない。
この自治体の学童保育の職員は約100人で、「暮らしていけない」といった理由で、年間に十数人が退職。新たな職員を募集しても応募が少なく、定員が満たせない状況が続いて負担が増しているという。
新たに1万人必要
ほかの自治体でも同様の事態が起きており、人手不足が学童保育の整備の遅れに直結している。今年5月時点で、全国の待機児童は1万6825人。学童保育の定員について、国は152万人を目標に掲げるが、144万人にとどまる。
目標達成のためには、新たに1万人程度の職員が必要になる。学童保育の整備を支援するこども家庭庁に対し、自治体からは「現状でも職員を確保できておらず、新たな学童保育の整備は難しい」と苦境を訴える声が相次いでいる。
職員が集まらない主な要因は、給与の低さにある。2021年度の平均給与は常勤職員が285万円、非常勤職員は146万円。同年の保育士の370万円や全産業平均の426万円と比べて大幅に低い。
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