2021年3月に劇場公開され、興業成績100億円を達成した、ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズ完結編「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。その制作は、プリプロジェクトを含めると足かけ11年にわたっていた。
中心人物は言うまでもなく庵野秀明氏(カラー代表)だ。総監督に加え、原作、脚本、画コンテ、原画、宣伝、エグゼクティブプロデューサーを兼任。全体を統括するマネジャーでありながら、脚本や原画などプレイヤーを兼ねていたことが、肩書きだけでも分かる。
公開当時に放送されたNHKのドキュメンタリー番組では、庵野氏が一度現場に任せようとしながらも、結局本人が直接カメラを手に取ったり、制作が進んでいたシーンを破棄して脚本から作り直したりするシーンも放送された。
視聴者からは「庵野秀明の“ちゃぶ台返し”」「ワガママに振り回されるスタッフがかわいそう」「結局自分ですべてやりたい人なのか」――そんな声も聞かれた。
だが、庵野氏の隣で制作に携わったスタッフが見ていた景色は少し違うようだ。
「庵野さんは“ちゃぶ台返し”はしない」。シン・エヴァの「Avant2パート」「Aパート」で制作進行を担当した、成田和優(なりた・かずまさ)氏は言う。
成田氏は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から2017年にカラーに転職。シン・エヴァ制作進行という内部の視点と、畑違いの職場からやってきた客観的な視点でプロジェクトを見てきた(成田氏のカラー入社の経緯については前編を参照)。
プロフィール
1984年生まれ。2008年にJAXAに入社し、約9年半勤務した後、2017年にカラーへ入社。有限会社ゼクシズに出向し、『あさがおと加瀬さん。』に制作進行として携わった後、カラーに復帰。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作進行を担当。2023年7月にプロジェクトとしての『シン・エヴァ』映画制作を振り返る公式報告書籍『プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン』を上梓。2023年11月下旬に株式会社カラーを退社、以降フリーランスとなる。
SNSアカウント:@Narita_Kazumasa
書籍公式サイト: https://www.khara.co.jp/project-eva/
NHKで放送されたように、シン・エヴァの「Aパート」の作り直しは実際にあった。だがその判断は「合理的」であり、スタッフも納得して付いていった、と成田氏は言うのだ。
前編に引き続き、成田氏のインタビューと、彼が中心となりカラーが編集したシン・エヴァの公式報告書籍「プロジェクト・シン・エヴァンゲリオン -実績・省察・評価・総括-」から、マネジャーとしての庵野秀明をひもといていく。
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