その昔、ヨーロッパの半分以上の大きさの湖があったらしい

  • 46,203

  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岩田リョウコ
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
その昔、ヨーロッパの半分以上の大きさの湖があったらしい
Photo: Utrecht University

その大きさ、想像を絶します。

地球史上最大の湖、パラテチス湖がギネス世界記録に登録されました。そんな湖、聞いたことないというみなさん。そうなんです、もう消滅してしまった湖なんです。どれだけ大きかったのかというと、今地球上にあるすべての湖をかきあつめて10倍にした大きさ。それがやっとギネス登録されたというわけです。

ヨーロッパの下半分、ほぼ全部

パラテチス湖は最盛期には、西はオーストリアから東はトルクメニスタンやカザフスタンあたりまで広がっていたといわれています。その範囲は280万平方キロメートルに及び(※EU加盟国の面積の合計は429万平方キロメートル)、約177万立方キロメートルの水を含んでいました。この湖の正確な測定値を記した研究が2021年にScientific Reportsに発表されています。

約1160万年前に存在していたこの湖。世界最小のクジラと言われるケトテリウム・リアビニーニ(Cetotherium riabinini)など巨大な生物が生息していました。そしてその沼地には、デイノテリウムと呼ばれる絶滅したゾウに似た大型の哺乳類も住んでいたそうです。

8d695606d95d2f64cc2b7bbcb2d731be
Graphic: Utrecht University

時間をかけて消滅していった

この湖は数百万年かけてだんだんと干上がり、35万年間でその水の3分の1以上と表面積の約3分の2を失い、最終的に約765万年前に消滅してしまったとギネス世界記録の公式サイトに記載されています。黒海、カスピ海、アラル海がパラテチス湖の一部として今も残っています。

ユトレヒト大学の地球科学者Dan Palcu氏は「我々のパラテチス湖探索は単なる好奇心を超えています。気候変動に鋭敏に反応する生態系を明らかにしてくれますし、この湖が気候変動を持ち堪えた理由を探求することで、現在そして将来の黒海などの海が有害物による危機を迎えていることに対処するための道となるでしょう」と声明を発表しています。

現代の気候変動の参考に

黒海の堆積物には気候変動によって大気に放出されるメタンが閉じ込められていると言われています。そして同時に黒海には温室効果ガスを蓄える炭素の貯蔵庫としても機能してしまいます。パラテチス湖の喪失は、現在の気候変動がどのように水源や環境を変えていくかという教訓を見せてくれるのです。

ちなみに「世界最大の湖」という記録は、すごく壮大で歴史的!っていう感じですが、ギネスブックには『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を映画館で292回見たフロリダの男性の記録というのもあるんですよね。いろんな世界記録があるもんです。