人気漫画「セクシー田中さん」の原作者芦原妃名子(ひなこ)さん=1月に死去=は、漫画をテレビドラマ化した日本テレビに「自身の意図とは異なる脚本を示された」と繰り返し訴えていたことをブログで告白していた。制作の過程に問題はなかったのか。映画やドラマ化で原作者の権利は十分守られてきたのか―。「海月姫(くらげひめ)」「東京タラレバ娘」など数々の漫画がドラマ・映画化されてきた漫画家の東村アキコさん(48)に聞いた。(望月衣塑子)
セクシー田中さん 漫画家の芦原妃名子さんが小学館の雑誌「姉系プチコミック」で連載していたラブコメディー漫画。アラフォーの独身女性「田中京子」を主人公に、同僚の派遣社員の女性たちとの友情を描いた。
芦原さんはブログに「一見奇抜なタイトルのふざけたラブコメ漫画に見えますが…。自己肯定感の低さ故生きづらさを抱える人達に、優しく強く寄り添える作品にしたい」と狙いを記していた。
日本テレビはドラマ版を2023年10〜12月に放送。全10話のうち9、10話は芦原さん自身が脚本を手がけた。芦原さんの死後、日テレの社内特別調査チームがドラマ制作の過程に問題がなかったかを調べており、石沢顕社長は5月の大型連休明けにも結果を公表する意向を示している。
◆「もう撮った」テレビ局側ともめたくない
―芦原さんの訃報をどう受け止めたか。
とにかくショックだった。同時にこれまで自分がテレビ局とドラマ化を巡り対峙(たいじ)してきた際、本音では納得していなくても「どうぞお好きにやってください」と我慢していたことも多く、そういう積み重ねの中で現在のような原作者が上なのか、プロデューサーや脚本家が上なのか、よく分からない状況が生まれていたかもしれないと反省した。
過去、ドラマの脚本ができた時、手を入れようとしたが、テレビ局側から「もう撮ってしまった」と言われたこともある。
逆にテレビ局から「チェックしてほしい」と言われたが、漫画の締め切りがあり、編集者から数日後に私に連絡が来て「ここは変えてください」と言っても「もう撮り終わってしまった」と言われたこともあった。漫画とテレビは、時間の流れる感覚が全然違う。
テレビ局とトラブルにしたくないと、文句を言わずへこへこしてきたことも良くない面があった。自分が何を言っても脚本は、テレビ向けに変えられてしまうという諦めもあった。しかし、それでは駄目だ。
◆原作へのリスペクトがある韓国
―テレビ局にものがいいづらい空気を変えようと思う契機が何かあったのか。
韓国で漫画「私のことを憶(おぼ)えていますか」をドラマ化した際、韓国から脚本家が4人来て4時間缶詰めにされた。原作にびっしり付箋が付いており、せりふの1行1行を「この時のこのキャラクターの気持ちは?」「どういう背景事情があるのか」など、自分でも思い出すのに苦労するくらい突っ込みがすごかった。
「好きにやっていいですよ」と言うと、韓国の脚本家から「何を言ってるんですか!」と怒られ、「先生そんなんじゃ駄目です。先生の世界観、思いをしっかり反映したいんです」と徹底的に意見を聞...
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