新種のヤモリを発見、ゴッホの名画「星月夜」にちなんで命名

その名も「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」、インドの西ガーツ山脈

2024.04.08
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今回見つかった新種のヤモリには、暗い背景に金色と青の鮮やかな模様が浮かんでいる。まるで名画「星月夜」のようだ。(PHOTOGRAPH BY AKSHAY KHANDEKAR)
今回見つかった新種のヤモリには、暗い背景に金色と青の鮮やかな模様が浮かんでいる。まるで名画「星月夜」のようだ。(PHOTOGRAPH BY AKSHAY KHANDEKAR)
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 フィンセント・ファン・ゴッホが「星月夜」を描いてから133年。そこから遠く離れたインドの西ガーツ山脈の岩陰で、イシャン・アグラワル氏が小さくてカラフルな新種のヤモリを見つけたとき、心に浮かんだのは、その名画だった。

 このヤモリは、一般名として「ゴッホの星月ドワーフヤモリ」という意味の「van Gogh starry dwarf gecko」、学名にはゴッホに由来する「Cnemaspis vangoghi」という名前が付けられた。学術誌「ZooKeys」の最新の研究で示された、Cnemaspis属の2つの新種の1つだ。

 アグラワル氏は、西ガーツ山脈について、「その信じられないほど多様な動物相については、まだほとんどわかっていません」と言う。そこはまさに生物多様性のホットスポットで、定期的に新種が見つかっている。(参考記事:「辰年に新種発見 火は吐かないが現実にいる世界のドラゴンたち」

色違いのヤモリ

 2022年、生物学者であるアグラワル氏は、新種の無脊椎動物を探すため、インドのタミル・ナードゥ州、西ガーツ山脈の東部にいた。この険しい山脈は、インド西岸に沿ってのびており、さまざまな種類の生物が生息している。ムンバイのサッカレー野生生物財団に所属するアグラワル氏は、数カ月をかけて2万キロ近くを移動しながら調査を続けていたが、頭からつま先までダニだらけになっただけで、たいした成果はなかった。(参考記事:「奇妙な新種カエルを発見、ブタ鼻で地中暮らし」

 これからどうするか迷いはじめたとき、青と黄色のヤモリを見かけた。そして、ゴッホの名画で見た、あの印象的なマスタードイエローの渦巻きと深いコバルト色を思い起こした。

 このヤモリの最初の標本は、スリビリプットハー・メガマライ・トラ保護区から見つかった。体長2.5センチほどのオスの標本で、同じく最近見つかったCnemaspis galaxiaにも似ていた。異なる種だとわかったのは、アグラワル氏がこのヤモリを持ち帰り、DNA解析を行ったからだ。

「ここで多くの種を発見している理由のひとつは、2つの群れが実際に2つの種だと示せる分子データがあるからです。これらの種は、とてつもなく多様なのです」。アグラワル氏はそう話す。

 近縁種と同じく、C. vangoghiのオスの色は、メスよりも明るい。アグラワル氏は、メスの標本も採取したが、メスの青と黄色はもう少し落ち着いた感じだった。

 米ミシシッピ女子大学の進化生物学者、トラビス・ヘイギー氏によると、この特徴的な色は捕食動物に見つかりやすい反面、メスは鮮やかな色のオスを好む。

「つねにこのふたつがせめぎ合っているわけです」とヘイギー氏は話す。

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