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CORSAIR初のピラーレスケース「6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Case」は裏面コネクターのマザーとも相性抜群!

内部スッキリで見栄え抜群な自作PCにチャレンジ!! text by 竹内 亮介

 前面左の支柱がない「ピラーレス構造」を採用するPCケースでは、強化ガラスの前面パネルと左側板を通して組み込んだパーツやイルミネーションを存分に楽しめる。ここ1、2年で急激に製品数を増やしており、自作PCのルックスを重視するユーザーがさらに増えていることを感じさせる。

 こうしたユーザーの満足度を、もう1段高めてくれる可能性を秘める機能が登場した。それが「裏面コネクター」構造の新コンセプトだ。マザーボードのコネクター類を裏面に移動することで、ケーブルやコネクター自体を見えないようにするというユニークな機能である。今回はこの二つの最新トレンドを踏まえて、ルックス重視の自作PCを作ってみよう。

裏面コネクター機能に対応するPCケースやマザーボードが登場

 まずは、今回の作例で重要な二つのパーツを紹介したい。一つはCORSAIRのミドルタワーケース「6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Case」だ。前面と左側面に強化ガラスを配し、さらに前面左の支柱をなくして視線を遮ることなく内部のパーツなどを楽しめるピラーレス構造を採用する。

ピラーレス構造を採用し、強化ガラス製の前面パネルや左側板を備える。実売価格は32,000円前後

 もう一つ注目したいのが、裏面コネクター機能への対応である。裏面コネクター対応マザーボードでは、各種電源ケーブル用のコネクターやピンヘッダー用のコネクターをマザーボードの裏面に搭載する。そのためマザーボードベースには各ケーブルを挿すためのスリットが必要になる。

 そこで6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Caseでは、マザーボードベース各所にスリットを設け、裏面コネクター対応のマザーボードを利用できるようにした。各種電源ケーブルやピンヘッダーケーブルをマザーボードベース裏面から接続することになるため、ほとんどのケーブルがメインパーツを組み込むエリアには露出しなくなり、非常に美しいPCを作れる。

マザーボードベースには、裏面からケーブルを挿すためのスリットが設けられている。スリットの位置を見ると、ATXおよびmicroATXの裏面コネクターマザーボードが利用できるようだ。なお、マザーボードを取り付けるネジ穴の位置は従来のATX規格と同様なので、通常のマザーボードも使用できる

 このほか、左右に領域を分けて左側にメインパーツ、右側に電源ユニットやストレージなどを組み込むデュアルチャンバー構造を採用している。この構造のPCケースではマザーボードベース裏面のスペースが広くなり、裏面からコネクターを挿すためある程度のスペースが欲しい裏面コネクター対応マザーボードを利用しやすい。

左側板は扉式になっており、背面のヒンジを軸にして開閉できる
フロントポートはUSB 3.0ポートが4基、Type-Cコネクターが1基という構成。利用時は電源ボタンの周囲に組み込まれたLEDが光る

 もう一つの重要パーツは、裏面コネクターに対応するマザーボードだ。この4月に相次いで製品が正式に発売されたが、今回はMSIのマザーボード「B760M PROJECT ZERO」が入手できたのでこれを組み込んでみる。

各所に金属製の大型ヒートシンクを装備し、冷却性能を高めたマザーボード「B760M PROJECT ZERO」。MSIの裏面コネクター対応製品群「PROJECT ZERO」の一つで、実売価格は37,000円前後

 チップセットにIntel B760を採用するmicroATX対応マザーボードで、各種電源コネクターやピンヘッダーコネクターなどがマザーボードの裏面に取り付けられている。

一般的なマザーボードなら電源コネクターやファンを装備するハズの場所には何もない
それもそのはず、そうした各種コネクター類はマザーボードの裏面に配置されている

 マザーボードとしての基本性能はミドルレンジチップセット搭載モデルとしては必要にして十分なもの。12+1フェーズ構成の強力な電源回路を搭載するほか、冷却用のヒートシンクもかなり大型のものが組み込まれており、要求電力が大きい高性能なCPUも安心して利用できる。2基装備するM.2スロットにはどちらにも大型で厚みのあるヒートシンクを装備する。

 このほかのパーツも紹介していこう。

CPUはIntelの「Core i5-14600K」、Turbo Boost時の最高クロックは5.3GHz。実売価格は50,000円前後
PC5-48000対応メモリ「VENGEANCE RGB DDR5 CMH32GX5M2B6000C40W」。実売価格は23,000円前後

まずCPUは、Intelの最新Coreシリーズから「Core i5-14600K」とした。Hyper-Threading対応の高性能コアを6基、高効率コアを8基搭載し、14コア/20スレッドに対応するミドルレンジの最上位と言えるCPUだ。強力な電源回路を備える今回のマザーボードなら、問題なく利用できる。

 また、DDR5対応CPU/マザーボードを選んだので、メモリはCORSAIR「VENGEANCE RGB DDR5 CMH32GX5M2B6000C40W」に。容量は32GB(16GBモジュールの2枚組)で、高輝度なアドレサブル LEDを装備する。ビデオカードについては、CPUとのバランスも考慮してNVIDIA GeForce RTX 4070 SUPER搭載カードとした。

ケーブル接続が容易な iCUE LINK対応の簡易水冷型CPUクーラー「iCUE LINK H150i RGB」。実売価格は42,000円前後
iCUE LINK対応の12cm角ファンを3基組み合わせた「iCUE LINK RX120 RGB Starter Kit」。実売価格は20,000円前後

 CPUクーラーは、CORSAIRの「iCUE LINK H150i RGB」。36cmクラスのラジエーターと3基の12cm角ファンを備える簡易水冷型CPUクーラーである。最大の特徴はシンプルなケーブル接続でファンやポンプの回転数、LEDの発光制御などが行える「iCUE LINK」に対応することだ。

 PCケースの6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Caseはケースファンを装備しないので、同じく iCUE LINK対応の12cm角ファン3基と制御ユニットをセットにした「iCUE LINK RX120 RGB Starter Kit」も追加した。

 いずれも3基のファンを並べて使用するが、ファン同士はケーブルなしの専用コネクターで“連結”。システムハブやラジエーターとはケーブル1本で接続する。ケーブルの本数はわずかに3本と必要最低限だ。

 iCUE LINKのクーラーやファンを選んだのは、もちろん「ケーブルの整理が圧倒的に楽だから」である。ケーブルが表側にほとんど出ることがない裏面コネクターマザーボードを使用し、すべての配線をケースの裏側(=右側面)で処理するわけだから、多少ケーブルの本数が多くなっても余裕なのでは? という意見もありそうだが、コネクターを含めたケーブルすべてが裏側に集中するため、実はケーブルの混雑具合はかなりのものになる。そのため、クーラーやファンに関するケーブルを劇的に削減できるiCUE LINKは、裏面コネクターマザーを使ったPC自作との相性がすこぶる良好なのだ。

白いヒートシンクを備えるM.2対応SSD「MP600 PRO LPX PCIe Gen4 x4 NVMe M.2 SSD 1TB」。実売価格は20,000円前後
フルプラグイン対応で耐久性の高いコンデンサーを採用する「RM850」。実売価格は20,000円前後

 CORSAIRはケースやメモリのほか、SSDもラインナップしている。今回はその中から「MP600 PRO LPX PCIe Gen4 x4 NVMe M.2 SSD 1TB」をチョイスした。シーケンシャルリードは7.1GB/s、シーケンシャルライトも5.8GB/sの高性能モデルだ。

 電源ユニットは同じくCORSAIRの「RM850」。850Wの定格出力をサポートし、80PLUS Gold認証を取得した強力な電源ユニットだ。またPCケース、簡易水冷型CPUクーラー、ケースファン、メモリ、電源ユニットにはホワイトモデルを選択し、ビジュアルの統一感も追求している。

ケーブル整理用のスペースが広いので組み込み作業は問題なし

 まずは完成図を見てほしい。ピラーレス構造のPCケースらしさを活かした美しい仕上がりだが、それに加えてATX24ピン電源ケーブルやEPS12V電源ケーブル、細くて雑多な各種ピンヘッダーケーブルがないため、雑然とした印象がまったくない。アドレサブルLEDのイルミネーションが、内部を淡く美しく照らすのも印象的だ。

ピラーレスなので内部のパーツがよく見えるほか、裏面コネクターのおかげで景観を損ねる細い雑多なケーブルは見えない
組み上げ後のCPU周辺~ビデオカード部分。見えているケーブル類は水冷のチューブとビデオカードの補助電源のみ

 このピラーレスと裏面コネクターマザーボードの組み合わせは、個人的には自作PCの見栄えを一歩前進させるものだと感じる。ビデオカードの補助電源ケーブルはなんとか上手いこと処理したいところだが、簡易水冷型CPUクーラーの冷媒用チューブについては、液体の流れを表現する部材と考えると意外と気にならない……かもしれない。

左側面から内部を見ると、雑多な細いケーブルが一切見当たらないことが分かる。本当にキレイだ
右側板は全体がメッシュ構造になっており、右側面に取り付けたケースファンの吸気を妨げない

 新しい試みなので、組み込み方が従来とどう変わるのかについて興味があるユーザーは多いだろう。今回の作例ではコネクター部分がマザーボード裏面に来るため、特に電源コネクターの張り出し部分の隠し方と、かなり余る電源ケーブルをどう整理してまとめるかがキモとなる。

マザーボード裏面のスペースはかなり広い。電源コネクター分のスペースも十分に確保している。ケーブルの流れを見やすくするため、シャドーベイのユニットは外した状態で撮影している

 6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Caseではデュアルチャンバー構造を採用するため、ケーブルを整理するためのスペースはかなり広い。今までの作業と大きく変わるところはなかったように思う。マザーボードベースにケーブルをまとめるためのフックが設けられており、余ったケーブルもケーブルタイを使えばスムーズにまとめられる。

ATX24ピンをはじめ、従来のマザーボードでは表面に接続していたケーブルはすべて裏面に配されたコネクターに接続。メモリーやCPUクーラーに手元を妨げられることなくマザーボードへのケーブル接続作業が楽々できる

 ただ、いくつか注意しなければならないポイントはある。まずEPS12V電源コネクターを挿すときには、シャドーベイ内部にケーブルを通す必要があり、コネクターが張り出す関係でシャドーベイのトレイが一つ利用できなくなった。とはいえ最近は大容量のM.2対応SSDも低価格化が進んでおり、それほど大きな問題にはならないだろう。

こんな感じでEPS12V電源ケーブルを接続するためにシャドーベイ内部を通す必要がある

 もう一つ、今回のようにmicroATX対応マザーボードを利用する場合は、マザーボード下辺のコネクターが電源ユニットの取り付け位置にかぶる。接続が必要なピンヘッダーケーブルは先に挿してから、電源ユニットを固定する必要がある(場合によっては電源ユニットと干渉する可能性はあるので、組み立て時に要確認)。

電源ユニットの固定位置とかぶるピンヘッダーケーブルは、先に挿しておく
iCUE LINK システムハブはジャマにならない位置にマグネットで固定。ケーブルにも余裕があったので今回は底面に配置

 裏面コネクター機能とは関係ないが、組み込み作業中に本当に便利だなと感じたのは、簡易水冷型CPUクーラーやケースファンが対応するiCUE LINKだ。アドレサブルLED搭載のケースファンや簡易水冷型CPUクーラーを利用する場合、一般的にはファンや水冷ヘッドごとに2本ずつのケーブル接続が必要になり、取り回しや整理の難易度が高くなる。

 しかし、iCUE LINK対応機器では、ファンはデイジーチェーンで接続できるのでケーブル接続は不要だ。また iCUE LINK対応機器同士を1本の細いケーブルで接続するだけで、LEDとファン用の配線が完了する。今回の作例でもケースファンや簡易水冷型CPUクーラーのケーブル整理に頭を悩まされることはなかった。

 前述のとおり、裏面スペースに集中するケーブルの量は、裏面コネクターマザーボードを利用すると通常よりもかなり多くなる。デュアルチャンバー構造の6500Xはかなり空間の余裕があるほうだが、もっと小型のケースの場合はケーブル捌きが一苦労。こんなときこそiCUE LINKが活きてくると言えるだろう。

CORSAIR iCUEを利用して、ファンやポンプの回転数はもちろん、アドレサブルLEDの細かな発光パターンまで自由自在に制御可能

ハイミドルのゲーミングPCとして順当な性能、冷却も十分

 最後に、いくつかベンチマークテストを行って実際の性能や各部の温度を見ていこう。一般的なアプリの利用状況とその快適さをScoreで示すPCMark 10 Extended、そして3DMarkの各種テストの結果はこちらだ。

PCMark 10の計測結果
3DMarkの計測結果

 アッパーミドルクラスのパーツを集めた自作PCとしては順当な性能であり、今後3~5年は安心して利用できるだろう。次に、実際のPCゲーム用ベンチマークテストでゲーミング性能をチェックしてみよう。

 一つは比較的描画負荷が軽めの「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク」で、グラフィックス設定は[最高品質]、解像度はフルHD時(1,920×1,080ドット)、WQHD時(2,560×1,440ドット)、4K時(3,840×2,160ドット)の3通りに設定し、描画状況やテスト後のレポートで確認できるフレームレートを見た。

ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマークの計測結果

 フルHD時やWQHD時は言うにおよばず、このゲームでは4K解像度でも評価は「快適」だった。4K時の平均フレームレートは76fps、テスト後のレポートを見ると最低フレームレートは50fpsだったが、テスト中の画面を見る限り、描画負荷でコマ落ちになっているような場面は見受けられない。ほとんどの状況では、4K解像度でも問題なくプレイできそうだ。

 もう一つ、こちらは描画負荷が高めの「サイバーパンク2077」のベンチマークテストモードを試した。グラフィックス設定は[レイトレーシング:ウルトラ]、解像度は先ほどと同じ3通りでテストしている。またこのゲームではDLSS 3を利用したフレーム生成機能にも対応しているので、その有無でフレームレートがどう変化するかもチェックした。

サイバーパンク2077の計測結果

 非常に負荷の高いグラフィックス設定ではあるが、平均フレームレートを見るとフルHD時やWQHD時はフレーム生成に頼らなくても問題なくプレイできそうだ。WQHD時の最低フレームレートは81で、テスト中やゲーム中に画面描画がおかしくなる場面はほぼないと言ってよい。

 一方で4K時は平均フレームレートが60fpsで、最低は54fpsだった。ゲーム中は場面によって微妙にカクつく場面もないではないのだが、シングルプレイのゲームなのでとりあえずこのくらいならOKと見てもよいだろう。フレーム生成を有効にすると、描画状況はグッと向上し、かなり快適に遊べるようになる。

 また、各部の温度の変化は下のグラフのとおりだ。「アイドル時」は起動後10分間の平均的な温度、「動画再生時」はフルHD解像度の動画を1時間再生中の平均的な温度である。「Cinebench時」はCinebench R23を実行中の最大温度で、主にCPU温度の状況が分かる。「3DMark時」は、3DMarkのTime Spyテストを利用したStressTest時の最高温度で、長時間のゲームプレイにおけるGPU温度の変化を確認できる。

各部温度の計測結果

 CPUに高い負荷がかかるCinebench時は91℃。36cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーを利用していることを考えると高いようにも思うが、第14世代Coreシリーズは、冷却が十分な状態ではなるべく高い性能を引き出せるようにチューニングされている。実際、テスト中の高性能コアのクロックは約5.3GHz、高効率コアのクロックは約4GHzで安定しており、その状態でこの温度ならかなり優秀だ。

 3DMark時のGPU温度は70℃。筆者がこれまで検証してきたミドルタワーケースと比べると、トップクラスの冷却性能と言ってよいだろう。ピラーレス構造では前面にファンは装備できないが、メッシュ構造の右側面から十分に外気を取り込み、組み込んだパーツをしっかり冷却できることが分かる。

ビジュアルと組み込みやすさを両立する優れた組み合わせ

 ピラーレス構造と裏面コネクター機能は、最強のビジュアル効果を生み出す組み合わせと言ってよいだろう。特に6500X Mid-Tower Dual Chamber PC Caseのようなデュアルチャンバー構造を採用したPCケースなら、裏面配線の自由度も高く、組み込み難易度はさらに下がる。新時代に突入した感のある「映える」PCで自作PCライフを楽しみたいなら、ぜひとも試してほしい組み合わせだ。