特集 2024年4月27日

クジャクを食べる。その味はまるで筋トレしまくった鶏

あなた、美味しいの?(このクジャクを食べたわけではありません)

南の島に住む猟師からクジャクを送ってもらえることになった。

その島ではその昔何者かによって野外に放たれたクジャクがポコポコと子孫を増やし、撃っても撃ってもなかなか減らないという。撃ったクジャクを役所に持って行くと駆除費の名目でいくらかもらえるからいい小遣い稼ぎなのだが、同じ金額を出してくれるなら送ってやってもよいと言われたので、大喜びでお願いすることにしたのである。

変わった生き物や珍妙な風習など、気がついたら絶えてなくなってしまっていそうなものたちを愛す。アルコールより糖分が好き。

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クジャクはきれいな鳥

クジャクはきれいな鳥である。

鳥という生き物はみんな美しい姿をしているが、中でもクジャクは特別だ。ここまでゴージャスという言葉が似合う鳥はなかなかいるまい。とくに有名なのは繁殖期のオスの、目玉模様を散りばめた飾り羽を半円形に広げた姿だろう。

かつて京都市内にウサギやニワトリくらいの距離感で何匹ものクジャクを飼育しているところがあった。無料で自由に見ることができたから、繁殖期には何度も通った。オスのクジャクが長くて重たそうな飾り羽をブルブルと震わせながら広げる姿はいつ見てもゴージャス、典雅、素晴らしいとしか言いようがなくて、メスのクジャクでなくても思わずフラフラ〜っと吸い寄せられそうになるくらいだった。

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羽を広げてアピールするクジャク。手前にいるのはメスなのだが、見慣れてしまったのか反応はそっけない。喜んでいるのは柵の向こうの人間ばかり。
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長い飾り羽は閉じていてもとても重たくて邪魔そう。おしゃれは気合いである。

ところで、図鑑などに載っているクジャクの姿というのはたいてい正面から撮られたものである。というより、後ろから撮った写真というものを見たことがない。

あるとき、せっかく生クジャクを間近で観察しているのだからぜひとも後ろ姿を見てやろうということになった。私と同行者は羽を広げたオスクジャクの後ろに回り込もうとした。我々の動きを察知したクジャクは体の向きを変えて、こちらに正面を向けた状態を維持しようとした。反対側から回り込もうとすると、またそちらに向き直ってあくまで背後を取らせぬ構えである。強情な鳥だ。

オスクジャクのかたくなな態度を受けて我々は一計を案じた。一人が正面に立って彼の注意をひきつけつつ、もう一人が物陰から近づいて背後に回る作戦だ。

これはうまくいった。見た目がどれだけ美しくても所詮は鳥である。

「人間様相手に意地を張るなんざ100年早い」

ほくそ笑みながら後ろ姿を激写した。

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そのときの写真がこれ。なんだか見てはいけないものを見た気がした。

裏から見たクジャクはとても地味だった。だから見られたくなかったのか。なんだか悪いことをしたなあと思ったのだった。

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きれいだけど害鳥

美しく着飾っていて、一見すると繊細で環境の変化に弱そうなクジャクだが、日本国内で外来生物として定着している。貴族的な外観によらずじつはしぶとい生き物なのだ。

なんと関西にも生息していて、私は以前、和歌山市の沖に浮かぶ友ヶ島という島で暮らすクジャクを見たことがある。

こうして改めて思い返してみると、珍しい鳥のようでいて案外いろいろなところで生クジャクを見てきたことに気づく。対面で会った回数でいえば、デイリーポータルZの編集部の人たちよりクジャクのほうがたぶん多いくらいである。

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友ヶ島のクジャク。
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廃屋に住み着いているようだった。

クジャクは雑食で、ほっておくと貴重な在来の小動物から農産物に至るまで手当たり次第に食い荒らしてしまう。そういうわけで、生息数の多い南の島では積極的に駆除されている。

今回譲ってもらったのは、そんな事情で駆除されたうちの一羽である。

⏩ クジャク、届く

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