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「業務システムにもインターネットにもつながらない」。始業直後に報告されたネットワーク障害は、瞬く間に庁舎全体に広がった。システム部員はすぐに原因究明に乗り出した。

 どこにも挿さらず放置されているLAN(Local Area Network)ケーブルと、そのすぐそばにポートが余っているスイッチを、ネットワークに関する知識のない人が見つけたらどうするだろうか。「何かの拍子に抜けてしまったに違いない」と、挿してしまうかもしれない。こうした親切心からループが生じ、その影響でネットワーク全体がまひすることもある。

 新年度が始まる2024年4月1日朝、那覇市役所全体が突然ネットワーク障害に襲われた。トラブル解決の陣頭指揮に当たったのは、ネットワーク機器の運用を担う情報政策課の伊覇太課長だ。トラブルをどう脱出したのか。経緯を詳しく見ていこう。

「何もできない」と職員が駆け込む

 地上12階・地下2階建ての那覇市庁舎では、職員が使うパソコンを有線や無線でレイヤー2(L2)スイッチであるエッジスイッチに接続している。そのエッジスイッチは各部署に複数台あるフロアスイッチで束ね、さらにフロアスイッチを各フロアに2台ずつ設置する集約スイッチに接続している。各フロアの集約スイッチをレイヤー3(L3)スイッチであるコアスイッチに接続することで、庁内LANを形成している。

トラブル発生時のネットワーク構成
トラブル発生時のネットワーク構成
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