プロゲーマー・梅原大吾氏は、格闘ゲーム界のトップシーンで選手として活躍するかたわら、プレーヤー人口の拡大にも努めてきた。同氏のあだ名「The Beast」を冠とする格闘ゲームイベント「Beast Cup」がその象徴だ。2023年5月の日経クロストレンドのインタビューでも、今後の活動指針として「新規プレーヤーの獲得とリテンション」を語っていた。「『ストリートファイター6』登場以降、新規層は増えたと思う」と言う同氏に、最近の活動と、格闘ゲームシーンのこれからを聞いた。
初のオフライン大会は550人が参加
――2024年3月のBeastCup Tokyoは初のオフライン大会となりました。今回、オフラインでやろうと決めた理由は?
梅原大吾氏(以下、梅原) Beast Cupには、1万人大会という目的があって、そのためにやっているんだけど、いざ1万人を達成したとき、「オンラインではできるけど、オフラインじゃ無理だよね」ってことになったら、それは寂しい結果になってしまうなと。だからどこかでオフラインの大会はやらなきゃいけないと思ってはいたんですよね。その1番目が今回の大会だったということですね。
――結果、参加者は550人、ライブ配信サービス「Twitch(ツイッチ)」での視聴回数は68万3831回(24年4月4日時点)となりました。手応えとしてはどうでしたか?
梅原 オフラインが初めてだったのでどうなるかなと思ったんですが、たくさんのプレーヤーが来てくれて、それはすごくよかったと思います。
ただ、実際にやってみて、次はこうしたいという考えも出てきましたね。例えば、今回開催した「東京たま未来メッセ」(東京都八王子市)は結構広かったんですよ。次も同じ場所でやるかは分からないけれど、広くてスペースに余裕がある会場なら、それをもっと生かせる企画もやりたいなと思っています。
大会である以上、参加者の半分は1回戦で負けて(トーナメントから)いなくなるわけで、そのためだけに足を運ぶとなると気が重いというか、自信がなければ来てくれないかもしれない。だから、たとえ1回戦で負けてしまっても、会場で遊べる要素が必要だと思うんですよ。
Evolution(EVO、米ラスベガスで毎年開催される世界最大級の格闘ゲームイベント)はそのあたりの工夫がありますよね。会場でいろいろなグッズを販売していたり、サイドトーナメントがあったりするから、たくさんの参加者が来るんだと思うんですよ。
――1年前の取材では、1万人大会を目指す上での今後の目標として「新規プレーヤーの獲得とリテンション」を挙げていました。今回、新規プレーヤーは多かったのでしょうか。
梅原 カウントしているわけじゃないけど、多かったと思います。「ストリートファイター6」(以下、スト6)6で入ってきた人が結構多かったんじゃないかな。
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――新型コロナウイルス禍でオフラインイベントはしばらくなかったので、新規プレーヤーの中にはオフラインのイベント参加が初めての人も結構いたのではないかと思いますけど、オフラインの強みみたいなものは感じましたか?
梅原 オフラインの強みというか。
オンラインって、無駄がないというか、用途に特化しているんですよね。ゲーム大会にしても家から参加できるし、ゲーム画面とトーナメント表さえあれば事足りる。それは確かにそうなんだけど、その分、無駄を排除してしまっている部分があるんだよね。
逆にオフラインは無駄がすごく多いんだけど、それが多分楽しいんですよ。会場にあるくだらないものとか、人の声とか、暑かったり狭かったりっていうのも含めて、快適ではないんだけど、そこも楽しむのが醍醐味だと思うんです。移動中の電車だって楽しめたらいいなと思うし。
ゲームセンターはそうだったし、自分はそっちで育ったから、やっぱりそういうのをいいなと思ってしまう。その良さを感じてくれる人がいたらいいなとは思いますよね。
――オフラインだとユーザー同士の交流があったりしますが、Beast Cup Tokyoでは梅原さんもファンの人たちなどと交流されたのですか。
梅原 ほとんどは配信スペースにいたんですけど、合間に参加者と写真を撮ったり、握手をしたりはしました。配信のコメントと顔が一致したというか、どういう人たちが自分の配信をいつも見てくれているのか、そのイメージがつかめたということはありますね。
――印象は違うものですか。
梅原 印象というより、今までは(配信の)向こう側のことを特に想像していなかったんですよ。でも実際会うとイメージが湧いたから、今後配信するときに意識することが何か変わる可能性はありますよね。そのあたりはオフラインならではの部分かもしれない。
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