先週末にダウ平均株価が一時、900ドルを超える値下がりとなったニューヨーク株式市場では、週明けの5日も取り引き開始直後から半導体やIT関連など多くの銘柄に売り注文が膨らみました。
ダウ平均株価は一時、1200ドルを超える急落となり終値は先週末に比べて1033ドル99セント安い3万8703ドル27セントでした。
ダウ平均株価の終値が1000ドルを超える急落となるのは2022年9月以来、1年11か月ぶりです。
株価の急落は、アメリカの景気減速への懸念が背景にあります。
先週発表された雇用統計の内容が市場予想を大幅に下回ったことで売り注文が一気に増加しました。
また、5日の東京株式市場で円高ドル安の進行とともに日経平均株価が急落したことも投資家心理を悪化させ、リスクを避けようという動きが加速しました。
ハイテク関連銘柄の多いナスダックの株価指数も一時、6%を超える急落となり、終値は先週末と比べて3.4%の下落でした。
市場関係者は「先週から続く株価下落に歯止めがかかるかどうかは今後、発表されるアメリカの経済指標を受けて投資家の間の動揺が収まるかどうかにかかっている」と話しています。

NYダウ 約1年11か月ぶり1000ドル超の急落 景気減速懸念 背景に
5日のニューヨーク株式市場はアメリカの景気減速への懸念を背景に投資家がリスクを避けようと株式を売る動きが加速し、ダウ平均株価はおよそ1年11か月ぶりに1000ドルを超える急落となりました。
「恐怖指数」一時 65まで上昇
5日のニューヨーク株式市場では市場参加者のあいだで疑心暗鬼が広がりました。
投資家の不安心理を表すとされるVIX指数は一時、65まで上昇しました。
「恐怖指数」とも呼ばれるこの指数はシカゴ・オプション取引所が公表していて、投資家がこの先、株価の値動きが激しくなると予想すると上昇します。
20を超えると警戒感を示すとされていて、5日の金融市場では投資家の不安がかなりの水準まで高まったことを示しています。
この指数が上がると投資家は株式などリスク性の資産の比率を下げる動きをとる傾向が強まるとされています。
《ニューヨーク株式市場 株価急落の背景》
ニューヨーク株式市場の株価急落の背景にはさまざまな要因が重なったと指摘されています。
【相次ぐ経済指標の悪化】
先週、アメリカでは弱い内容の経済指標が相次ぎました。
全米の企業を調査する「ISM=供給管理協会」が1日に発表した製造業の「景況感指数」は先月46.8と、前の月から低下し市場予想も下回りました。
また、2日に発表された先月の雇用統計では、就業者数の伸びが市場の予想を大幅に下回ったほか失業率が4.3%と前の月に比べて0.2ポイント上昇しました。
失業率の上昇は4か月連続です。
【“9月の利下げ遅いのでは” との見方広がる】
市場ではFRB=連邦準備制度理事会が9月の会合で利下げに踏み切るとの見方が強まっていました。
そこに弱い内容の経済指標が相次いだことで景気減速を避けるには9月の利下げでは遅すぎるのではないかとの見方が投資家の間で広がり、不安心理をかきたてたと指摘されています。
【ハイテク関連株の急落】
ことしのニューヨーク株式市場の株価上昇を支えてきたのはハイテク関連銘柄です。
アメリカの半導体メーカー、インテルが1日、赤字決算と人員削減を発表すると2日にはこの会社の株価が26%の急落となり、ほかのIT企業の株価下落にもつながりました。
著名な投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイがIT大手アップルの株式を大量に売却したことも明らかになり、5日の株式市場の下落要因となりました。
【「キャリートレード」取り引きに逆転現象】
さらに指摘されているもう一つの大きな要因は、金利の低い円で資金を調達してその資金を投資に回す「キャリートレード」と呼ばれる取り引きに逆転現象が起きたことです。
主要国の中央銀行がインフレを抑え込むために利上げをするなか、日銀は数少ない超低金利政策を続けた中央銀行として世界にも知られ、円を活用した「キャリートレード」が活発に行われてきました。
それが日銀の利上げと円高によって、この取り引きがうまく回らなくなり、円高による損失を穴埋めしようと株式を売る投資家が数多くいたと市場関係者は話しています。