テクノロジーの進化とともに変わる世界の風景。スマートフォン、自動運転、空間映像にヘルス系トラッキング。ロボット掃除機やキャッシュレス決済など、日々の生活で目に見えて変わっていくものもあります。
アメリカではセルフレジは社会的に受け入れられないという声も出ていますが、テクノロジー導入が不適切だったという類似例がまた1つ。冷凍コーナーのスマートスクリーンが絶不調のようです。
冷凍コーナーにスマートスクリーンを導入したけど…
米大手ドラッグストアチェーンWalgreensが、冷凍コーナーのドアにスマートスクリーンを導入したのは2020年のこと。スマートスクリーンを手がけるスタートアップCooler Screens Inc.と契約してスタートしました。
Cooler Screensが手がける冷凍コーナーのスマートスクリーンとは、冷凍・冷蔵室の中が見える通常のガラス扉を、庫内の中身やそれに関する広告などを表示するディスプレイに置き換えたもの。さらに、お客さんの買い物動向などをトラッキングできる機能を備えています。
しかしBloombergの報道によれば、Walgreensのこの策は大失敗。取り返しがつかなくなる前に、店内から撤廃したいものの、契約がらみで揉めに揉めているといいます。
真っ黒なスクリーン扉
ことの発端は、WalgreensがCooler Screensと結んだ10年契約を解除しようとしたこと。その理由は理解にたるもので、スクリーンのちらつき、クラッシュ、商品の誤表示が多発したため。一部店舗では、スクリーンの出火騒ぎまで発生。
なんとか早期解約したいWalgreensと、それは契約違反だと認めないCooler Screens。裁判所に何度も出向いて対話を続けているものの議論は平行線。そんな中、Cooler Screensは報復としてある作戦を実行。なんと、Walgreens100店舗以上で、冷凍ドアのスマートスクリーンのコンテンツをカット。冷凍扉のスクリーンは、何も表示されていないただ真っ黒な状態になってしまったのです。
消費者からしたら、スクリーンには何も映されていない上に、中身も見えないとう最悪の状況。冷凍・冷蔵コーナーのどこに何があるのか、いちいち扉を開けて確認しなければなりません。そして、これがいつまで続くかは謎。
スマートドアが成功していた世界線は?
もし、スマートドアが理想通り適切に稼働していたらどうなっていたのでしょう。
WalgreensとCooler Screensが描いていたのは、冷凍・冷蔵庫内の商品を適切に表示し、消費者の動向・売れ行きに応じて、リアルタイムで価格表示を変えていくダイナミックプライシングな仕組みでした。
しかし、現実は理想とはほど遠いものになってしまいました…。