2015年に屋久島で一匹のオスのニホンザル(Macaca fuscata)がメスのニホンジカ(Cervus nippon)の背中に飛び乗り、交尾を試みた。研究者たちは、この行動はおそらく繁殖の機会がないことに対するはけ口だろうと報告した。言い換えれば、偶然カメラに捉えられた一度きりの出来事のようだったが、2020年、21年、23年にも目撃された。
後のいくつかの事例には、2015年のニホンザルが関与しているようだった。もしそれが本当に同じ個体であるなら、群れの他のサルはこのサルからシカへのマウンティングを学び、「社会的伝播」として知られる方法で広めている可能性がある。この研究は、2024年12月24日付けで学術誌「Cultural Science」に発表された。
ただし、研究者たちは、このサルを特徴的なアーモンド形の目に基づいて特定したが、完全に同じ個体だと断言はできない。「見分けるのは難しいですが、霊長類学者であるなら、群れの個体を一体ずつ識別しなければなりません」と、フランス、ストラスブール大学の霊長類学者であるセドリック・シュール氏は言う。
「興味深いのは、おそらく最初にオスがシカへのマウンティングをしたのは性的欲求不満によるもので、ある特定の目的のためだったということです」とシュール氏は言う。
しかし、そのオスが支配的な地位まで上り詰め、周囲のメスもその行動を行うようになった今、「その行動は時間とともに変化しています」とシュール氏は言う。「より複雑になっています」(参考記事:「ニホンザル、温泉でストレス軽減、偉いほど長風呂」)
「都合のいい」友達?
性的な面はいったん脇に置いておくとして、ニホンジカとニホンザルはすでに興味深い異種間の関係を築いている。
シカはサルの後をついて回り、サルが木から落とした食物を食べたり、サルの糞を食べたりもする。一方、ニホンザルは、シカを毛づくろいして栄養価の高いダニや他の寄生虫を食べる。
両方の種が利益を得るこのようなサービスの交換を、科学者は「相利共生」と呼ぶ。サルとシカがお互いから食物を獲得することはその定義に当てはまると、米アリゾナ大学の進化生態学者で相利共生を研究し、今回の新たな研究には関与していないジュディス・ブロンスタイン氏は言う。(参考記事:「数十万種に広がった成功戦略、双方が利益を得る「相利共生」とは」)
しかし、このマウンティング行動は何か別のもののようだ。
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