「プーチン氏止められなかった」「あなたは感謝していない」米ウクライナ首脳公開口論詳報

ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月28日(ゲッティ=共同)
ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月28日(ゲッティ=共同)

トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が2月28日に米ホワイトハウスで行った首脳会談は、記者団の前で激しい口論となった。当初は笑い声も漏れたが、バンス米副大統領がバイデン前米大統領を批判し、これにゼレンスキー氏が反論したあたりから険悪な雰囲気に。激しくなったやり取りの要旨は以下の通り。

「停戦合意破った」

バンス氏「米国では4年の間、記者会見でプーチン露大統領について激しい言葉遣いで語る大統領(バイデン氏)がいた。そしてプーチン氏はウクライナに侵攻し、国の大部分を破壊した。平和や繁栄への道のりは外交にある。(バイデン氏は)米国の大統領の言葉が行動よりも重要であるかのように装った。米国を良い国にするためには、外交を行う必要がある。トランプ大統領はそれを実践している」

ゼレンスキー氏「プーチン氏は東部の一部とクリミアを2014年に占領した。私はバイデン大統領のことだけを言っているのではない。オバマ大統領、トランプ大統領、バイデン大統領、そして現在のトランプ大統領。トランプ大統領はプーチン氏を止めるであろう。しかし、2014年は誰もプーチン氏を止められなかった。プーチン氏は占領し、奪ったのだ。人々を殺したのだ」

トランプ氏「2015年」

ゼレンスキー氏「2014年だ」

バンス氏「2014年から2015年だ」

トランプ氏「2014年か。私はここ(ホワイトハウス)にいなかった」

ゼレンスキー氏「しかし、2014年から2022年の間、誰もプーチン氏を止められなかった。彼とは2国間で多くの話し合いを行い、(停戦合意に)署名した。2019年には私とプーチン氏、マクロン仏大統領、メルケル独首相との間で停戦合意に署名した。全員が私に対し、プーチン氏はもう攻撃しないと言った。ガス供給についても契約に署名した。しかし、プーチン氏は停戦合意を破った。私たちの仲間を殺し、捕虜の交換もしなかった。ロシアとの間で捕虜交換に署名したが、プーチン氏は履行しなかった。バンス氏は外交と言うが、あなたの言う外交とは何なのか」

バンス氏「あなたの国の破壊を止める外交だ。(ゼレンスキー)大統領、米国の大統領執務室で、米メディアの前で訴えを起こそうとするのは失礼だと思う。あなた方は人員に問題を抱え、必死で徴兵している。この紛争に終止符を打とうとしている(トランプ)大統領に感謝すべきだ」

ゼレンスキー氏「あなたはウクライナに来たことがあるのか?あなたが言っている『問題』とは何なのか」

バンス氏「私は…」

ゼレンスキー氏「一度ウクライナに来てほしい」

バンス氏「私はニュースで見てきたし、何が起きているか知っている。あなたは(各国首脳を)プロパガンダツアーに連れ歩いている。人員の問題があるということに同意できないのか」

ゼレンスキー氏「問題はある」

バンス氏「米国の大統領執務室で、あなたの国の破壊を防ごうとしている政権を攻撃することが敬意ある態度だと思うのか」

ゼレンスキー氏「質問が多い。最初から始めよう」

バンス氏「いいだろう」

ゼレンスキー氏「まず最初に、戦争中は誰もが問題を抱えている。でも、あなたには(戦場と米国を隔てる大西洋という)素晴らしい海がある。今は(問題を)感じていないが、将来、感じることになる」

ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(ロイター=共同)
ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(ロイター=共同)

「押し付けるな」

トランプ氏「(私たちの気持ちについて)あなたは知らない」

ゼレンスキー氏「神のご加護があれば戦争は起きないであろう」

トランプ氏「私たちがどのように感じるべきかを押し付けるな。私たちは問題を解決しようとしている。私たちがどのように感じるべきかを押し付けるな」

ゼレンスキー氏「そうは言ってない」

トランプ氏「あなたは指示する立場にはいない。覚えておいてほしい。あなたは私たちが何を感じるかを決める立場にはない。私たちはとてもいい気分だ」

ゼレンスキー氏「あなたは影響を感じるであろう。それを言っている」

トランプ氏「私たちは、とても気分よく、とても力強く感じるだろう」

ゼレンスキー氏「あなたは影響を感じるであろう」

トランプ氏「あなたは、あまり良い立場にはいない。非常に悪い立場にある。あなたは今、(交渉の)カードを持っていない。米国と一緒ならカードを持つことができる」

ゼレンスキー氏「私はカードゲームをしているわけではない。大統領、私は真剣なのだ。私は戦時大統領だ」

「第三次世界大戦でギャンブル」

トランプ氏「あなたはカードゲームをしている。何百万人もの命と第三次世界大戦を賭けてギャンブルをしている。あなたが言ったことは、米国に対して非常に失礼だ」

バンス氏「この場で一度でも『ありがとう』と言ったか。あなたは昨年10月にペンシルベニアに行き、野党(民主党)のために選挙運動をした。ウクライナを救おうとしている米国と大統領に感謝の言葉を述べるべきだ」

ゼレンスキー氏「あなたが戦争について大声で話すとすれば…」

トランプ氏「バンス氏は大声で話していない。あなたの国は大きな問題を抱えている。ちょっと待て」

ゼレンスキー氏「答えていいか?」

トランプ氏「だめだ。あなたはたくさん話した。あなたの国は大きな問題を抱えている」

ゼレンスキー氏「分かっている」

トランプ氏「あなたは勝っていないが、私たちのおかげで状況が良くなる可能性が高い」

ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(ロイター=共同)
ホワイトハウスで会談するトランプ米大統領(右)とウクライナのゼレンスキー大統領。和平交渉を巡り激しい口論となった=2月28日(ロイター=共同)

「私たちは孤立」

ゼレンスキー氏「大統領、私たちはウクライナにとどまり、強くあり続けている。戦争が始まった当初から、私たちは孤立していた。感謝している」

トランプ氏「あなたは孤立していなかった。米国は愚かな大統領(バイデン氏)の下で3500億ドルを供与した。武器も与えた。そしてウクライナ兵は勇敢だ。しかし、ウクライナ軍は米国の軍隊(の武器)を使わなければならなかった。もし武器がなかったら…」

ゼレンスキー氏「あなたは私を招待してくれた」

トランプ氏「私たちの武器がなければ、戦争は2週間で終わっていた」

ゼレンスキー氏「3日間だ。プーチン氏もそう言っていた。3日間で終わっていた」

トランプ氏「おそらくそれより短いだろう」

ゼレンスキー氏「もちろんそうです」

トランプ氏「これはとても難しい話だ」

バンス氏「ただ『ありがとう』と言うべきだ」

ゼレンスキー氏「何度も言っているが、米国国民に感謝している」

バンス氏「意見の相違があることを受け入れろ。米メディアの前で争うのではなく、裁判で争おうじゃないか。あなたが間違っていることは分かっている」

トランプ氏「何が起きているか米国国民が知ることはいいことだ。とても重要なことだ。だからこんなに(メディアの前でのゼレンスキー氏との協議を)長く続けた。感謝しなければならない」

ゼレンスキー氏「私は感謝している」

トランプ氏「あなたはカードを持っていない。ウクライナ国民は死にかけている。兵士が不足している」

ゼレンスキー氏「やめてください、大統領」

トランプ氏「いいか。兵士が不足しているのはいいことだ。あなたは『停戦を望んでいない、戦争を続ける』と言うが、もし今すぐ停戦できるのなら、銃弾が飛び交うこともないし、兵士が殺されることもなくなるのだ」

ゼレンスキー氏「もちろん、私たちは戦争を止めたい」

トランプ氏「しかし、あなたは停戦を望んでいないと言っている」

ゼレンスキー氏「私が言ったのは、保証付きの停戦だ」

トランプ氏「私は停戦を望んでいる。なぜなら(安全の保証の?)合意よりも停戦の方が早いからだ」

ゼレンスキー氏「ウクライナ国民に停戦について聞いてくれ。彼らが考えているのは…」

トランプ氏「それはバイデンという名の頭の良くない男の話だ。オバマ氏と一緒だった」

ゼレンスキー氏「米国の大統領だった」

トランプ氏「ちょっと待て。それはあなた方にシーツ(毛布を中心とした非殺傷兵器)をウクライナに供与したオバマ氏の話だ。私は(対戦車ミサイルの)ジャベリンをウクライナに渡した」

ゼレンスキー氏「そうです」

トランプ氏「私は戦車を破壊するためジャベリンを供与した。オバマ氏はシーツを供与した。あなたはもっと感謝しなければならない。私たちが一緒であればカードはある。しかし、私たちが一緒でなければカードはない。これは厳しい交渉になるだろう。なぜなら態度を変えなければならないからだ」

「プーチン氏とロシアは利用された」

記者「ロシアが停戦合意を破棄したらどうするのか?」

トランプ氏「何を言っているんだ?」

バンス氏「ロシアが停戦を破ったらどうするのかと聞いています」

トランプ氏「もし何かあったらだと? もし今、頭に爆弾が落ちたらだと? もしロシアが停戦合意を破ったら? 知るか。ロシアはバイデン氏もオバマ氏も尊敬していなかったが、私を尊敬している。プーチン氏は私のようにひどい経験をした。インチキな魔女狩りに遭い、プーチン氏とロシアは利用された」

トランプ氏「私が言えるのはこれだけだ。プーチン氏はオバマ氏やブッシュ氏との取引を破ったかもしれないし、バイデン氏との取引も破ったかもしれない。何があったのかは知らない。しかし、プーチン氏は私との取引は破らなかった。彼は私と取引したがっているが、取引できるかどうかはわからない。問題は、私はあなたが強くなれるよう力を与えたということだ。そして、米国抜きであなたは強くなれないということだ。ウクライナ国民はとても勇敢だ」

ゼレンスキー氏「ありがとう」

「感謝していない」

トランプ氏「取引をするか、しないかだ。私たちが席を立てば、あなたたちは戦い抜くことになる。良い結果になるとは思わないが、戦い抜くことになる。あなたはカードを持っていない。合意に署名してしまえば、あなたの立場はずっと良くなる。だが、あなたは全く感謝していない。よくないことだ。正直に言おう。よくないことだ。よし、もう十分だろう。どう思う? 最高のテレビ番組になりそうだな。よし、まとめよう。ありがとう」

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