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「日本の低学歴化」が止まらない…その「ヤバすぎる実態」

日本社会を支配する「暗黙のルール」

仕事で求められているよりも学歴が高い?

日本企業が求めているのはこうした潜在能力であって、大学などで学んだ専門知識ではない。経団連(日本経済団体連合会)は、1997年から毎年、加盟企業に「新卒一括採用についてのアンケート」を行ない、「選考にあたって特に重視した点」を複数選択で5つ挙げさせている。

2018年調査の上位5位は、「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」だった。複数選択にもかかわらず、「語学力」を挙げた企業は6.2%(17位)、「履修履歴・学業成績」は4.4%(18位)、「留学経験」は0.5%(19位)にすぎない。こうした傾向は、調査開始から大きく変わっていない。

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そのため日本は、国際的にみれば「低学歴化」しているにもかかわらず、仕事で求められているよりも学歴が高いと感じている人が多い。求められているのが大学入試突破までの実績であって、大学で何を学んだかではないからだろう。

2013年の新聞には、「日本人、学歴高すぎ? 仕事上の必要以上に『ある』3割」という記事が載った。OECD(経済開発協力機構)が発表した国際成人力調査(PIAAC)で、調査対象の23の参加国・地域のうち、仕事に必要な学歴よりも自分の学歴のほうが高いという回答が最多だったのだ。日本はその回答が31.1%で、OECD平均の21.4%を大きく上回って1位だった。なおドイツは23.2%、韓国は21.2%、アメリカは19.7%だった。

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この調査結果は、回答者が自分の主観で答えたものである。これでは、大学院の進学率は高まらない。また大学生が学業に励んだり、語学を習得したり、留学に行くといった行動も期待できないだろう。

それでは、なぜ日本では、専門的な学位が評価されないのか。それは、日本の雇用慣行と深くかかわっている。これを述べるのは、第2章以降としよう。

さらに連載記事<なぜ日本は「停滞」から抜け出せないのか…その「根本的な原因」>では、日本社会を支配する「暗黙のルール」の正体に迫っていきます。ぜひご覧ください。

*本記事の抜粋元・小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)では、雇用、教育、社会保障、政治、アイデンティティ、ライフスタイルまでを規定している「社会のしくみ」をわかりやすく解説しています。なぜ日本がうまくいっていないのか、その原因を考えるヒントが詰まっています。社会学者・小熊英二さんの力作をぜひお読みください。

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