僕は食品業界(給食会社)の中の人(営業部長)、まだまだ業務用のお米の確保に追われている。営業部が米の確保に奔走しているのは、業務用の米の目途が立たなければ新規開発どころではないからだ。ウチの会社は中小企業だ。事業展開にしくじったら持ちこたえる体力はない。必死なのだ。
契約している米業者からは年末に「現状以上の取扱量は約束できない。無理」と伝えられていた。先日、政府備蓄米の放出というポジティブな要素があった。業務米の取扱量がどうなるか期待していたが、残念ながら好転しなかった。契約米業者からはいい回答はなかった。それどころか、すでに4月の値上げが決まっていたが、5月以降も値上げが決まった。グラフは昨春からのウチが納品している業務用のお米の価格の推移である。A社がメインで取扱い量の70パーセントくらいをカバーしている。扱いが大きいので価格も抑えてもらっている。その他BCD社が高いというわけではない。なお特定されないように価格は10円単位にしてある(実際は1円単位)。
2025年3月時点で650〜830円。一般に流通しているお米は現在キロ800円(5キロで4000円)くらい。業務用米なので割安だが、一般小売り向けの米も業務用と同じような傾向を示すので、5月以降もグラフのようなほぼ横ばいの価格推移になる可能性が高い。備蓄米効果でグラフがガクーンと下がればいいのだけどね。備蓄米の放出があったにもかかわらず残念ながら5月以降の値段の価格アップが改めて提示された一方、これまで実施されてきた価格アップより上がり幅が減っているのは良い傾向だ。備蓄米の効果かもしれない。
なお、年明けから売り込みに来ている怪しげな業者の謎の米の価格もまた一段下がっている。2カ月でキロ300円下落。備蓄前の放出で出所の怪しい米の価格がビビッドに下がるのは興味深い。ウチの会社が納品している業務用米が値下がりしない理由は(これについては米業者によって差異があるけれども)、「相応の価格で購入したため、下げたくても下げられない」「周りの業者の動きを見て価格を設定したい」だ。安く設定したら注文が殺到してパンクするということもあるようだ。
怪しげな業者の謎の米の価格設定は正直よくわからない。売り時を間違えないよう、損をしないよう、ただ価格を下げているようだ。彼らは業界を知らないので「備蓄米が出たヤベー」と慌てふためいているように見える。だが、まともな食品会社は買わないよ。山間部に大量廃棄して虫虫パラダイスを建国しないことを心から祈るばかりである。
最後にウチの会社は中小の食品会社である。業務用米の確保は会社の存続がかかっている。会社上層部の五人が己の保身のために重い腰をあげた。「独自の買い付けルートを確保した」とリーダー格が宣言して五人で飛び出していった。他業種金融機関からの出向でやってきた人たちなので金融機関時代のコネだろうか。五人で飛び出す姿はゴレンジャーのようだった。1時間で帰ってきた。そんな近くに米があったとは。会議室には5キロサイズの米が5袋積んであった。ホームセンターで5キロの家庭用米(4500円)を買ってきていた。合計25キロ。1人1袋限定だから5人で5袋。ゴレンジャーの意味があった。25キロ。会社上層部はウチが何トンの米を使っているのかガチで知らないらしい。まあ25キロでもいいけどね。「会社のために自腹を切った」とアピールしていたけど後日経費で落としていた。悲しかった。
何がいいたいかというと、中小の食品会社はこういうしょぼい取り組みをしながら懸命に生き残ろうと努力しているということ。くれぐれも怪しい米や異常に安い米に手をつけないようにしてほしい。謎の米ビジネスモデルが成立したら今後も同じような米騒動が起こる可能性が高くなるからだ。それとは別に、備蓄米の放出などの動向や米不足で大騒ぎする世の中を観察して「お米は金になる」と気付いた新たな悪い人たちが、今後、変なムーブをキメる事態が起こるのではないかと今から危惧している。(所要時間30分)