「聖地」をめぐる暗闘
3月20日、「埼玉スタジアム2002(以下、埼スタ)」でサッカーの日本代表対バーレーン代表の試合が行なわれ、日本が2対0で勝ち、8回連続のワールドカップ出場を決めた。6万人の観客が詰めかけた埼スタは、日本の勝利で興奮のるつぼと化した。
埼スタは陸上トラックがなく、観客が間近で選手を見られるサッカー専用スタジアムだ。Jリーグ一の人気チーム「浦和レッズ」のホームスタジアムとしても知られており、レッズは年間20ほどのホームゲームを、ここで戦う。
ところが、この「サッカーの聖地」ともいわれる埼スタの運営・管理をめぐって、スタジアムの所有者である埼玉県とレッズが“暗闘”をくり広げているのだ。
本来なら協力関係にあるべき二者のあいだで、いったいなにが起きているのか。
【第二回】「 埼スタをめぐる「浦和レッズ」と「埼玉県」の暗闘のなか…「県の都市整備部」と「公益財団法人」が見せた「不審な動き」 」
【第三回】「 「浦和レッズの社長」が取材に答えた…埼玉スタジアムをめぐる「レッズと埼玉県」の暗闘について「トップが語ったこと」 」
昨年8月、埼玉県は埼スタの「指定管理者」を公募した。指定管理者とは、自治体の公共施設の管理を委ねられ、〈住民ニーズに効果的・効率的に対応〉(総務省)する団体だ。埼スタを熟知しているレッズは膨大な提案書を作成し、応募した。
しかし、レッズは、県都市整備部副部長ら7人で構成する選定委員会に「次点」と評価され、昨年12月の埼玉県議会の議決を経て落とされた。選ばれたのは、県が所管する「公益財団法人埼玉県公園緑地協会」が代表法人となり、「一般社団法人埼玉県造園業協会」と「埼玉ビルメンテナンス協同組合」が構成員となる、「埼玉スタジアム2002公園マネジメントネットワーク」だった。
緑地協会や造園業協会、ビルメン組合にサッカーやスポーツビジネスのプロはいない。試合を開催するノウハウの乏しい集団に今後5年間の埼スタの運営が任されたのである。