プロも逃げだす米国株安、個人投資家は逆張り-10年後の利益期待
Bailey Lipschultz-
20年6月以来の大幅株安、エヌビディアやETFに個人の買い殺到
-
個人投資家の株買越額は過去2番目の高水準-プロは悲観的でも
米株式相場が2020年6月以来の大幅安を演じた3日、唯一買い方に回ったのは近年市場を賑(にぎ)わせている個人投資家たちだった。
フィデリティ・インベストメンツの証券口座利用者を追跡したデータによると、個人投資家はエヌビディアのほか上場投資信託(ETF)の「バンガードS&P500ETF」など人気銘柄の多くに資金を投じた。最近の相場急落が、長期的な利益を得るための逆張り投資の新たな機会になると見込んだ動きだ。
アマゾン・ドット・コムやアップル、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフトは、フィデリティのユーザーの間で最も活発に取引された個別株の一部。これらの銘柄の買い注文は売り注文の5倍から8倍に達した。
「株価が下げ続けても、買い増しして平均購入価格を下げられる」と言うのはフリーランスのソフトウエア開発者ペドロ・コレアさん(30)。退職後に向けて金融関連の書籍を読んでいるというコレアさんは、アマゾンとグーグル、ASMLホールディングの株式を今週購入したと述べ、「10年後には株価が上昇しているだろう。安くなるほど、もっと多く買えるので、幸福感も増す」と語った。
JPモルガン・チェースのグローバルクオンツ・デリバティブ担当ストラテジスト、エマ・ウー氏によると、取引開始から3時間で個人投資家の株式買越額は28億ドル(約4100億円)と、同行が10年前にデータ追跡を開始して以来2番目の高水準となった。

個人投資家の間ではかねて、相場が長期的には上昇するとの考え方から押し目買い心理が支配的だ。新型コロナウイルス禍初期の相場急落時には、他の投資家が売却する中で個人投資家は数少ない買い方の一角となり、その決断が功を奏した人も多かった。
押し目買いの考え方は3日に再び試された。トランプ大統領がウォール街の想定よりも貿易戦争をエスカレートさせたことで世界的に株安が加速した。
一方で、プロの投資家らは楽観論を共有していない。全米アクティブ投資運用協会(NAAIM)の調査によると、資金運用者は米国株のエクスポージャーを23年11月以来の水準まで引き下げた。一方、ゴールドマン・サックス・グループのデータによると、ヘッジファンドは3月に過去12年で最速のペースで世界の株式を売却した。
著名な資金運用者ビル・グロース氏は投資家に対し、「落ちてくるナイフをつかもうとしてはいけない」と警告。「これは即座に悪影響が及ぶことを除けば、1971年の金本位制廃止に匹敵するような、経済および市場における歴史的な出来事だ」と指摘した。
原題:Retail Traders Step In to Buy as Others Flee in Tariff Rout(抜粋)