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- 2025/04/11 掲載
グーグルやアマゾンなどIT大手で「大量解雇」、従来とは「まるで違う」ポイントとは?

グーグル、アマゾン、IBM、HPなども大規模レイオフ
テクノロジー業界に新たなレイオフ(従業員解雇)の波が到来している。テック業界の人員削減を追跡するLayoffs.fyiによると、2025年に入ってからの解雇者数は2万4401人(2025年3月28日時点)に達し、90社以上が人員削減を実施したことが明らかになった。特に大規模なレイオフを実施したのが、ヒューレット・パッカードだ。同社は2024年第4四半期に前年同期比16%の増収を記録し、5億9,800万ドルの利益を計上したにもかかわらず、今後12~18カ月の間に2500人の人員削減を行う方針を発表。これは全従業員の約5%に相当する規模となる。
アマゾンも大規模な人員整理を進めており、2025年1月にケベック州の7つの倉庫を閉鎖し、1700人の従業員が影響を受けた。さらに同月、企業部門とコミュニケーション部門でも数十人規模の人員削減を実施。2025年3月27日時点で、ペンシルベニア州で432人、カリフォルニア州で86人、バージニア州で88人の削減を行ったことが明らかになっている。
IBMもクラウド部門を中心に約9000人の人員削減を計画していることが報じられた。同社は、「IBMの人材戦略は、顧客が必要とする業務を遂行できる適切な人材を確保することが基本」とした上で、「特にAIとハイブリッドクラウドの分野において、顧客から最も需要のある技能を持つ人材との整合性を図る」と説明している。
テック業界全体の人員削減規模を見ると、2023年は26万4000人超、2024年は15万2000人超と推移してきた。2025年はまだ第1四半期が終わったばかりだが、すでに2万4000人を超える規模となっている。
この背景には、AIやクラウドといった成長分野への投資を加速させるため、既存部門の効率化を進める動きがあるとみられる。なお、これらの数字には、在宅勤務からオフィス勤務への復帰命令に応じられずに退職を余儀なくされた従業員は含まれていないとされる。
従来と違う「成果主義」の徹底、低業績者は「迅速に退出」
テック業界における今回のレイオフは、これまでとは少し異なる様相を呈する。それを象徴するのがメタのレイオフだ。同社は従業員の約5%に相当する3600人規模の人員削減を計画。マーク・ザッカーバーグCEOは、「パフォーマンス管理の基準を引き上げ、低業績者をより迅速に退出させることを決定した」と社内メモで通知した。
この動きは、シリコンバレーの伝統的な人材戦略からの大きな転換を意味している。これまでテック企業は、競合他社への人材流出を防ぐため、生産性が十分でない従業員であっても高給で引き留める傾向にあった。しかし、業界の収益構造が変化する中、各社は効率的な組織運営へと舵を切り始めている。
特に注目されるのは、メタが導入した新たな評価制度だ。同社の人材開発成長プログラム部門のヒラリー・チャンピオン部長の社内メモによると、管理職は12~15%の従業員を最下位評価の対象として特定するよう指示されている。すでに2024年中に5%の自然減があった場合、追加で7~10%の従業員を最下位評価に分類する必要があるという。
人員削減の通知は、アジア太平洋地域を皮切りに、欧州・中東・アフリカ、そして北米・南米の順で段階的に行われる。米国の従業員に対しては、基本給16週間分に加え、勤続年数1年につき2週間分の追加給付を含む退職金パッケージが提示されている。
ただし、ドイツ、フランス、イタリア、オランダの従業員は現地の規制により対象外となり、別途現地のパフォーマンス管理プロセスに従うことになる。
この人員削減は社内に大きな不安を引き起こしている。Business Insisderは、ある従業員のコメントとして、「マークは恐怖を作り出している。彼に忠実でなければならない文化を作っている」と指摘。別の従業員は「成果主義に基づく削減というレッテルは、新たな職を探す際に極めて不公平な影響を及ぼす」との懸念を示している。
なお、メタはAI分野での人材採用を積極的に進める方針も示しており、今回の人員削減が、AIを中心とした将来技術への投資を見据えた組織再編の一環であることも明らかになっている。 【次ページ】グーグル、AIインフラ投資拡大に向け人員整理を加速
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