AI、こうやって使えばいいのか。
去る3月27日、東京 原宿のBABY The Coffee Brew Clubをお借りして、ギズモード・ジャパンとTECH INSIDERの共同主催で「AI×業務効率化」をテーマにしたイベント「AI First Lounge Vol.1」が開催されました。
「AIを業務に活用しよう!」という声がけはあちこちでされていると思いますが、いざ実際に取り組もうとするとどうすればいいのか、参考となるケースはなかなかお目にかかれないと思います。
本イベントでは、「個人によるAIの活用事例」としてギズモード・ジャパンの利用ケースを紹介したほか、「組織によるAIの活用事例」として、ソフトバンクの100%子会社で、生成AIに特化したB2B SaaSと業務変革コンサルティングを提供するGen-AX株式会社の代表取締役社長CEO、砂金信一郎(いさごしんいちろう)氏をゲストにお招きしてさまざまな実例を解説。
当日は会場も盛況で、この分野に対する人々の関心の高さを実感できました。その模様をレポートしましょう。
スピードラーニング風活用法

まずはギズモード編集部より、編集長代理の金本太郎と編集部員ヤタガイが登壇。
ギズでは特定のAIサービスを一括で導入はしておらず、各自が気になったAIをどんどん試して、各自の経験を共有していくスタイル。実際にどんな感じでAIを活用しているのかを紹介しました。
まずギズモード編集部には、AIを利用していないスタッフは1人もいません。利用頻度や、課金or無料など、それぞれの温度差は異なりますが、全員がプライベートや仕事にがっちり活用しております。使っているAIサービスはやはりChatGPTが人気で、そのほかにはGemini、Grok、Midjourney、Adobe Fireflyなどさまざま。
プライベートでの使い方は、「ゲームの攻略法」「ふわっとした知識を補完する」といったちょっとした調べものがメイン。仕事では「資料の翻訳」「タイトルなどのアイデア出し」「メール文書の作成」といったところが目立ちます。この辺は多くの人もやっていることでしょうね。
ギズモードならではのちょっとクリエイティブな使用法も挙がっていました。まずはヤタガイの使い方。それはGoogle NotebookLMに、海外の論文を丸ごとぶち込むというアプローチ。
ギズモードでは考古学や生物学など、サイエンス系の話題も扱っていますが、この分野は日々新しい発見があって、今まで常識とされていた学説が更新されることも多い。そのために最新トレンドを追っておきたいのですが、学者ではない身で海外のジャーナルに掲載された論文を精読するのはたいへんですよね。
そこで、論文をGoogle NotebookLMにぶち込んで要約してもらい、さらに読み上げ機能でPodcast風の音声コンテンツに仕上げてもらうんです。これは海外の学生がスピードラーニング的に活用している人気の学習法だそうで、電車に乗っているときにも流し聞きできるしタイパは抜群。読み上げ機能は日本人にも聞き取りやすい英語で話してくれるとのこと。
翻訳の精度が上がってくれば、海外の論文を日本語で読み上げなんてのも、割と早く実現できそうですね。
画像制作に音楽に
チャットAIと並んで人気の画像生成AI。ギズモードでもバナー画像作成に活用しています。
画像生成AIで、求めるテイストの画像を得ることは難しいですが、そこはプロンプトのセンスが問われるところ。コツとしては「ストーリー性のあるプロンプト」をこしらえることで、人間味のある画像を生み出せるそうです。

さらには、SunoAIで楽曲制作もやってます。
ただ、AIでそのまま完成曲を作るのではなく、AIに元ネタになりそうなトラックを作ってもらって、それをサンプリングしてビートやコードを加えて再構築するっていうスタイルですね。これだと元ネタの著作権をクリアできるし、制作の楽しさも損なわれません。
あとは編集部とライターとのコミュニケーションツールとしても活用しています。ライターさんに企画のネタ出しをお願いするとき、具体的にこういうネタが欲しいという事例をAIで詳しく説明することで、記事の解像度が上がってきます。内輪のコミュニケートって、どうしても大事な説明を気付かないうちに端折りがちなので、そこをAIで補う感じですね。
なお、ギズモードの鉄則として、AIをさまざまなインプットやアイデア出しの補助に使ったとしても、最終的なアウトプットはあくまでも人間が行なうということを重視しています。タイトルや本文をまるっとAIに書かせて、それで終わりっていうのはナシ。
AIは平均点のテキストを生み出すのは上手かもしれませんが、ライターや編集者個人のキャラクターを踏まえたテキスト作りや、突発的なアイデアを生み出すことは得意ではありません。そこはやはり人間が関わらないとダメな部分なんです。いくらAIを使ったとしても、自分の頭を使うのをやめちゃダメってことですね。
AIが風景を変える

次に登壇したのがTech Insider編集チーフの小林優多郎と、Gen-AXの代表取締役社長 CEOの砂金信一郎(いさごしんいちろう)さん。
砂金さんは日本オラクル、ローランド・ベルガー、日本マイクロソフトでのテクニカルエバンジェリスト、LINE(現LINEヤフー)でのAIカンパニーCEOを歴任してきたIT業界のベテラン。現在はソフトバンク傘下のGen-AXで、生成AIのビジネス向けSaaSとコンサル業務を手がけています。
砂金さんによると、AIによって今後は物理空間が変化してくるとのこと。具体的には職場や街の風景、人々の生活スタイルが目に見えて変わってくるんじゃないかといいます。それによって人々のコミュニケーションのスタイルも変わってきますが、ご自身の役割としてそれをいい方向に導くのが大事だと考えています。ただ、進化のスピードが早すぎ、予測できないファクターが多くてたいへんとのことです。
またIT業界の労働環境の改善も目指しています。IT業界では昔から多重下請けの構造が常態化しており、それがAIによってクリアになることで、労働環境も良くなっていくのではないかと。
現状のAIは実務をこなすことはできるかもしれませんが、最終的な責任を取ることはできません。そこはあくまで人間がやるべき領域で、プロデューサー的な感覚がより強く求められていくでしょう。身近でわかりやすいところでは、やはりAIに理解しやすいプロンプトを生み出すスキルが必要です。現状のAIにとっては、整理されたフローチャートのような指示よりも、文章の羅列の方が理解しやすいですが、今後はマーメイド記法などを活用したシーケンス図などの制作が注目されていくんじゃないかと予想されます。
あとAIは、人間が感じる「面白さ」をどれだけ理解しているかっていうところにも、砂金さんは注目していました。例えばAIがもっと進化すれば、ギズモードの過去記事を大量に学習させて、キャラクターを踏まえた記事制作が可能になるかもしれません。ところが実際には、上っ面でキャラ寄せしてるだけというか、空気が読めない雰囲気になっちゃうというか、とにかく「浅い」んですよね。
人間の思考にはノイズが混じることもありますが、それが刹那のひらめきにもつながります。そうした飛躍的な発想力はAIより人間の方が圧倒的に得意なんだから、AIには得意な分野をやってもらうと砂金さんは言います。「AIは文房具みたいなもの」なんだし、臆せずガンガン使う方がいいとおっしゃっていました。

この「AI First Lounge」は、今後はペースを上げて、さまざまな豪華ゲストも迎えて、AIのトレンドや未来形をわかりやすく紹介していきます。開催に関してはギズモードでもご案内しますので、こまめにチェック&参加してみてくださいね。