将棋の第38期竜王戦5組ランキング戦決勝、高田明浩五段(22)対山下数毅(かずき)三段(16)戦が12日、大阪府高槻市の関西将棋会館で行われ、山下が高田を下し、決勝トーナメント(本戦)進出を決めた。プロ棋士養成機関「奨励会」に在籍する山下は、奨励会員として初のランキング戦優勝を果たした。奨励会員の本戦進出は史上初の快挙となった。

山下の後手で始まった決勝は、午前中に千日手が成立。先手後手を入れ替えての指し直し局の戦型は、一手損角換わり。難解な中盤を経て、山下が終盤の攻め合いでリードを広げて押し切った。

終局後、山下は「(持ち時間が)5時間の将棋で結果を残せたのはかなり充実感があり、自信につながっている」と振り返った。

半年ごとに開かれる奨励会の「三段リーグ」では、2位までに入ればプロ入り(四段昇段)できるが、3位にも「次点」が与えられる。次点2回獲得でもプロ入り(フリークラスでの四段昇段)でき、山下は過去に三段リーグで次点1を獲得している。新たな規定により今期の竜王戦5組決勝進出で、進行中の三段リーグで規定の成績(18局で5勝以上)を収めれば次点1回が付与され、プロ入りの権利を得る。

現在、山下は三段リーグで2勝2敗。残り14局で3勝すれば2つ目の次点獲得が確定する。この権利を行使すれば、10月1日に17歳でプロ入りとなる。

奨励会員としては初の本戦入りに「これまでと変わらず、一局一局を丁寧に積み重ねていければと思います」と意気込んだ。

山下は英国出身、京都市在住。森信雄七段(73)門下。この日の対戦相手となった高田は同門の兄弟子。父の剛さんは京大数理解析研究所の講師を務める数学者。前期は竜王戦ランキング戦で、最も下のクラスの6組で準優勝し、5組に昇級していた。将棋界に「新星」が誕生する。【松浦隆司】