2025年5月15日、“その人が人間であること”を証明するためのデジタルID「World ID」を日本で運営・展開するTools for Humanity社が発表を行ないました。

ざっくりまとめると、「国内でのユーザー数拡大に本格的に取り組みますよ」とのこと。

World IDは、ChatGPTのサム・アルトマン氏が生み出した「AI時代に必要なサービス」のひとつです。
なぜ今このタイミングで国内での規模拡大を本格化するのでしょうか? 同社の認識が非常に「今」に即していて、興味深かったのでご紹介します
ただ「人間であること」を証明するのみ

World IDは、虹彩を用いて「人間確認」をしないと取得できない、というデジタルIDです。登録は現実世界でのみ可能で、虹彩を読み取る「Orb」という専用機器を用います。虹彩は複製が難しいため、事実上人間しかWorld IDは取得できません。しかも、1人1つだけです。

運転免許証などで行なう「本人確認」(どこの誰かを証明)とは異なり、「IDの所有者が人間であること」のみを証明するのが特徴です。人間であるか否か──「AIではない」を証立てることのみに特化しています。
“AIが人間のフリをする時代”への処方せん
なぜそういった仕様なのかと言えば、相手が人間ではない──BotやAIプログラムだと困る、という状況が昨今生じてきているからです。

たとえば、ゲーム関連のサービスがWorld IDとの提携を発表しています。ゲーミングPC・周辺機器メーカー Razerは、同社のユーザーID「Razer ID」の認証にWorld IDを利用できるようにしています。国内でサービス開始予定の「TOKYO BEAST」も同様です。

ゲームは、人間のために作られています。人間には到達不可能なパフォーマンスで戦うBotや、ゲーム内アイテムのリアルマネートレード(RMT)目的で無限に稼働するBot/プログラムなどは、ゲームバランスを大きく崩します。TOKYO BEASTのようにNFT要素があってゲームデータに資産性がある場合では致命的です。

また、マッチングアプリ「Tinder」でもWorld ID認証がスタートします。ふつうはリアルな出会いを求めて登録するものですが、そこにAI。絶対に出会えないAIがいても邪魔なだけです。

World IDは、AI時代に「信頼」を構築するための基盤を提供するサービスだと言えます。
BotまみれのSNSやオンラインゲーム、やりたいですか? 「コイツAIじゃねーの?」とあなたが思うような状況では、相手もあなたを「AIじゃね?」と思っている可能性がある。
相互に不信感を抱えて楽しむのは…難しいんじゃないでしょうか。
世界中でユーザー増加中

現在、World IDは世界で2600万人のユーザーを獲得し、そのうち1200万人がOrbによる認証を完了しています。日本でも、カフェやショップ、商業施設など約60-70カ所にOrbが設置され、認証拠点が拡大しています。
AIは生産性を増大させるなど大きなメリットをもたらす反面、悪用も容易です。自分でさえ、「この使い方は書けないな」っていうのが山ほどあります。使ってたらすぐ思いつけてしまう。こういうサービスもいるよね、と思いました。
World IDは明らかに「AIの負の影響を人間の世界から切り離す」ように構想されています。AIがあることによる不安感・不信感を抱えてこれからの世界を生きていくのは、あまりにもしんどすぎるでしょう。サム・アルトマン氏がこういったことまで考え、行動しているのはすごいですね。
登録すると謎の仮想通貨がもらえる

ちなみに、World IDに登録すると「Worldcoin」という仮想通貨がもらえます(相場変動するので参考程度ですが、自分がもらったときは6,500円ほどに相当し、Amazonギフトカードなどと交換できました)。
紹介キャンペーンなども展開され、追加でWorldcoinをもらえたりもするそうです。公共性・インフラ性が非常に高いサービスな一方で、単純にオイシイ、という側面もあったり(ちなみに、予算はWorld財団というところが出してくれているそうで、要は赤字投資)。
Orbの設置場所に行く必要がありますし、まだ対応サービス拡大中の状況なので、フル活用できるようになるのは先ですが、「AIのなりすましとかヤだなぁ」と思う方は、登録しておくといいかもしれません。
Source: Tools for Humanity, World ID