IMAX社がクリストファー・ノーラン監督のために準備!
あのノーランがまたやってくれました。ノーラン監督は映画の一部のシーンをIMAXスクリーンいっぱいに広げて上映するというスタイルをハリウッドでもいち早く取り入れた人物。
これまでにも『ダークナイト』、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』、『デューン 砂の惑星PART2』、『シナーズ(原題:Sinners)』、『オッペンハイマー』といった超大作がIMAX上映されてきましたが、映画ファンが長年抱いていた疑問があります。
それは「なんで映画の一部分だけが迫力ある画面なの? 全部IMAXで撮影できないの?」ということです。ノーラン監督はついにその問いに向き合いました。
IMAXカメラで全編撮影はできない?
実は従来までは、カメラが大きすぎて雑音も大きく、ハリウッド映画全体をその方法で撮影することができませんでした。特定のアクションシーン、コンサート映画、または対話のないドキュメンタリーのみなら可能だった撮影手法なんです。
しかし、ノーラン監督は新作映画『ザ・オデッセイ(原題:The Odyssey)』のために、IMAX社に1.43:1のアスペクト比で映像を撮影できる、より小型で静かなカメラを開発するよう依頼。そしてIMAX社は、ついにそれを実現したのだとか!
IMAX社がノーランのためにカメラを開発
そういう道のりを経て、ノーラン監督は今回『ザ・オデッセイ』を100%IMAXフィルムカメラで撮影できたというわけです。これはハリウッドの大作映画としては史上初の試みとなりました。
絶賛開催中のカンヌ国際映画祭に出席したIMAXのCEOであるリッチ・ゲルフォンド氏は、この件について触れ、このように述べています。
クリスから電話があって、「問題を解決する方法を見つけられたら、『ザ・オデッセイ』を100%IMAXで作るつもりだ」と言われました。
そして、今まさに私たちはそれに取り組んでいます。クリスは私たちのビジネスのその側面、フィルムレコーダーやフィルムカメラを見直すことを私たちに迫ったのです。
the Hollywood Reporterの報道によると、IMAXフィルムカメラは以前のモデルよりも30%静かでかなり軽量化されたとのこと。ノーラン監督は現在、映画撮影でこのIMAXフィルムカメラをすべて稼働させていますが、撮影が終わった後は、他の映画監督たちもこのカメラを使って撮影が可能になるそう。
IMAXシアターではシーンでアスペクト比が変わっていた
2009年『ダークナイト』で、それまで映画撮影では使われていなかったIMAXフィルムカメラでの部分的な撮影を試みたのはノーラン監督。IMAXフィルムカメラで特定のシーンを撮影することで、映画の残りの部分よりも大きく鮮明な映像を見せることができました。
それ以降、ノーラン自身やマイケル・ベイ、ブラッド・バード、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ライアン・クーグラーなど、名だたる映画監督たちが同様の手法で映画を製作してきました。
本物のIMAXスクリーンで映画を観ると、ほとんどの部分は従来のアスペクト比で表示されますが、特定のシーンではアスペクト比が変わり、スクリーン全体が埋め尽くされ、長方形から巨大な正方形に変わるようになっています。
これは現在IMAXで上映されている多くの映画とは違ってきます。より小型のデジタルIMAXカメラで撮影されているため、標準的なアスペクト比よりも大きく投影できる映像を捉えているんですが、実はこれ、完全な1:43:1のアスペクト比ではないんです。
どういうことか、わかりやすい解説ガイドがあります。このガイドは『オッペンハイマー』が公開された際にトータル・フィルムから発表された解説です。
このガイドの左上の画像に示されている通り、ノーラン監督は撮影する際、IMAXフィルム形式で全編を撮影しているんです。

『ブラックパンサー』のクーグラー監督も最新作『シナーズ(原題:Sinners)』の撮影に使用したフィルムストックとアスペクト比を動画で公開しました。この映画は部分的にIMAXフィルムカメラで撮影されています。これもとても参考になる情報なので、ご参考までに。
これまでにも完全にIMAXフィルムカメラで撮影された映画はありましたが、ハリウッド大作では存在しませんでした。
理解するには劇場へ
これが観客にとって何を意味するか、それは実際に『ザ・オデッセイ』を映画館で見るのが一番わかりやすいかも。お近くに1.43:1のアスペクト比で映画を上映できるIMAXの映画館がもしあれば、本作をぜひ見に行ってみてください。
マット・デイモン、トム・ホランド、アン・ハサウェイ、ゼンデイヤ、ルピタ・ニョンゴ、ロバート・パティンソン、シャーリーズ・セロン出演の『ザ・オデッセイ』は、2026年7月17日に全米公開予定(日本公開未定)です。