想像してみてほしい。何の落ち度もないのに、公安警察に目を付けられて冤罪を仕立て上げられたら? その「捜査」の手法について警察内部の人間も「まあ、捏造ですね」と裁判で証言するほどだったら? 大川原化工機冤罪事件とはそういう事件だったのである。先週、警視庁公安部と東京地検の捜査を違法と認め、都と国に賠償を命じた判決が東京高裁で出た。
初公判のわずか4日前に突然起訴を取り消し
しかしニュースで「外為法違反」などと聞くと難しく感じる人も多いはずだ。この件、毎日新聞の遠藤浩二記者が『追跡 公安捜査』という調査報道を続けており、この春には著作にもなった。先週、「文春オンライン」にも抜粋が公開されたのでじっくりと読んでほしい。
【警察が証拠を捏造し、“無実の罪”で中小企業の社長らを逮捕…「捜査の過程で人が亡くなった」冤罪事件・大川原化工機事件の発端】
要は、今回の事件は生物兵器に転用可能な装置を海外に不正輸出したと、中小企業が公安部に疑われたものだった。その結果、化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人が外為法違反で逮捕・起訴されたのだ(2020年3月)。しかし驚くのはこの先だ。
なんと東京地検が、初公判のわずか4日前に突然起訴を取り消したのである(21年7月30日)。起訴取り消しとは、最初から法律に違反する犯罪事実が無く、無実だったということを意味する。裁判所が有罪、無罪の判決を下す前に起訴したはずの東京地検が白旗をあげたのだ。極めて異例な事態だったことがわかる。
しかし、無実が証明されたからめでたしめでたし、という話ではない。